1学期始業式のメッセージ

校内の桜が春の光に鮮やかに映える今日、いよいよ2026年度の新学期が始まりました。

先日、晴れやかな表情で入学式を終えたばかりの中学・高校の新入生、そして新たな風を本校に吹き込んでくれるフレッシュな編入生を迎え、啓明学院は中学503名、高校735名、合わせて1,238名の大きな家族として歩み始めました。さらに高校2年生には、後ほど紹介する留学生も加わります。 また、多井畑の啓明寮には新たに11名の新入寮生を迎え、現在は18名の高校生が寝食を共にし、切磋琢磨する共同生活をスタートさせています。キャンパス全体に満ちる新しいエネルギーを感じ、私自身、身の引き締まる思いです。

 

共に「チャレンジャー」として歩む1年

新しい環境、新しい学年が始まるこの時期、皆さんも「今年はどんな1年にしようか」と、期待に胸を膨らませていることでしょう。私は校長として7年目の春を迎えましたが、その決意は変わりません。私自身も一人の学習者としてしっかりと学び、健やかに体を動かし、自分に与えられた責務を一つひとつ果たしていこうと、改めて心に誓っています。

そして本年度、私は自らに「啓明チャレンジャー」としての課題を課しました。それは「フランス語の習得」です。 実は、5月末、フランスのサン・ブリューにある姉妹校、サン・ピエール高校との学校間交流のため、11名の生徒とともに現地へ赴くことになりました。私にとって初めてのフランス訪問です。交流を実りあるものにするための最善の準備として、今、フランス語を学んでいます。 正直に申し上げれば、聞くことも話すことも非常にハードルが高く、苦戦の連続です。しかし、皆さんに「何事にも挑戦しよう、頑張ろう」と呼びかける立場として、私自身がまず、壁にぶつかりながらも学ぶ姿を見せたいと思っています。皆さんが新しい学問や部活動に挑むように、私も皆さんとともに、学びの喜びと苦労を分かち合いたいと考えています。

 

「生の声」が交差する校長室を目指して

今年も私は、皆さんの「生の声」を聴くことを何よりも大切にします。 悩みごとの相談はもちろん、嬉しい報告や、あるいは特に用事がない時でも、ふらりと校長室を覗いてみてください。扉が開いている時は「いつでもどうぞ」の合図です。

一昨年から始めた「ランチタイム・トーク」も継続します。昨年も、5、6人のグループで訪れてくれた生徒たちと、将来の夢について真剣に語り合ったり、時には他愛もないお喋りで笑い合ったりと、非常に豊かな時間を過ごすことができました。中学生も高校生も、ぜひ卒業までに一度は私と一緒に昼食を囲みましょう。前日までに予定を確認しに来てくれれば、喜んで時間を空けておきます。

また、先日音楽室のギターを新調した際、役目を終えた古いギターを2本、校長室で預かることにしました。ギターが好きな人、音楽について語りたい人も大歓迎です。この部屋が、皆さんと私を繋ぐ、温かな交流の場となることを願っています。

 

誰かのために力を尽くす「奉仕と共感」

この春休み、多くの部活動が目覚ましい活躍を見せてくれました。中学チアリーディング部は全国大会という大舞台で見事なパフォーマンスを披露し、高い評価をいただきました。また、数理科学研究会の5名のメンバーは、卒業生とともに東京で開催された国際会議で発表を行い、大学の研究者と肩を並べて共同研究や論文作成に励んでいます。その高度な探究心には驚かされるばかりです。

そしてもう一つ、この春、私たちの心を震わせた素晴らしい活動がありました。吹奏楽部の皆さんによる「友情応援」です。

先日、阪神甲子園球場で開催された選抜高校野球大会に、吹奏楽部の姿がありました。それは啓明学院の試合ではありません。同じ兵庫県代表として戦う神戸国際大学附属高校を応援するためのものでした。 定期演奏会を控えた多忙なスケジュールの合間を縫っての参加でしたが、野球少年たちが憧れる聖地・甲子園のアルプススタンドで、彼らは一音一音に魂を込め、全力の演奏を届けました。あの力強い音色は、間違いなくグラウンドの選手たちの背中を押し、テレビの前で応援する多くの人々に勇気を与えました。

試合は延長戦までもつれ込む接戦の末、惜しくも敗れてしまいましたが、試合後、神戸国際大学附属高校の校長先生から、深く感激されたご様子で熱い感謝のお電話をいただきました。 吹奏楽部の皆さんは、自分たちの損得ではなく、「今、目の前で頑張っている誰かのために」という純粋な想いで、他校の部員の方々と練習を重ね、最善を尽くしてくれました。これこそが、本校が大切にする「与えられた力と時間を、誰かの喜びのために使う」という「奉仕と共感の精神」の具現化です。学びの真髄を体現してくれた皆さんに、心からの敬意と感謝を表します。

 

「挨拶」と「言葉遣い」に込めるリスペクト

次に、啓明が長年大切にしてきた「挨拶」についてお話しします。 本校を訪れるお客様は、一様に皆さんの挨拶を「本当に素晴らしい」と絶賛してくださいます。これは、先輩たちが築き上げ、皆さんが今日まで守り続けてきた、誇るべき伝統です。 挨拶は単なるマナーではありません。それは相手の存在を認め、「私はあなたのことを大切に思っています」という、人としての深いリスペクト(敬意)の表明です。

とくに上級生の皆さん。新入生や新任の先生方は、まだ緊張の中にいます。皆さん自身がお手本となり、積極的に「おはようございます」「こんにちは」と声をかけてください。その一言が、どれほど相手の心を解きほぐし、安心させるか想像してみてください。皆で挨拶を交わし、世界一温かい言葉が響き合う学校を、ともに作っていきましょう。

言葉に関連して、もう一つ皆さんと約束したいことがあります。「言葉遣い」についてです。 現在、先生方には、授業や行事といった「オフィシャルな場」において、生徒の皆さんを「さん付け」で呼ぶようお願いしています。 なぜ、あえて「さん」を付けるのか。それは、皆さんが単なる「教育を施される対象」ではなく、一人の自立した人格を持ち、神様からその成長を託された、かけがえのない存在だからです。

ですから、皆さんにもお願いします。公式の場では、ぜひお互いを「さん付け」で呼び合ってください。 もちろん、休み時間や放課後に、親しい友人とニックネームで笑い合う親密な時間を否定するつもりはありません。しかし、授業での議論の場、代表として発言する場、そして先生と向き合う場では、あえて「さん」を付ける習慣を身につけてほしいのです。 言葉を変えることは、意識を変えることです。相手を敬う言葉を使うことで、自分自身の立ち居振る舞いが整い、内面から本当の意味での「品格」が備わっていくはずです。

 

「手と心」を鍛え、光となる

甲子園で見せた「献身」、日々の「挨拶」、そして言葉を通じた「敬意」。これらはすべて、自分を律し、他者を思いやる心から生まれるものです。 最後に、新年度を迎えるにあたり、私たちのスクールモットーを改めて胸に刻みましょう。

“Hands and hearts are trained to serve both man below and God above.”

「手と心は、神と人に仕えるために鍛えられる」

2026年、テクノロジーはかつてない進化を遂げ、AIが多くのことを代行してくれる時代になりました。だからこそ、私たちは問い直さなければなりません。「私たちは何のために、自らを鍛えるのか」と。

啓明学院で皆さんが数学の公式に挑み、英語で対話を重ね、理科の実験に没頭するのは、単に知識という「持ち物」を増やすためではありません。その学びの時間は、皆さんの「手」を、「誰かの困難を解決できる確かな力」へと昇華させるプロセスなのです。科学技術がいかに進歩しようとも、その技術に命を吹き込み、現実をより良い方向へ動かすのは、泥臭く粘り強く取り組み、汗を流して鍛え抜かれた、皆さんの「手」に他なりません。

そして、その「手」がいかに強大な力を得たとしても、そこに温かな「心」が通っていなければ、その力は時に人を傷つけ、孤立させてしまいます。だからこそ、聖書に学び、自分とは異なる背景を持つ人の存在に思いを馳せ、困難な状況にある人の痛みを自分の痛みとして想像する。そのような経験を通じて、皆さんの心を、「他者の喜びを自分の喜びとして受けとめられる、豊かな器」へと育てていってほしいのです。

学びは、決して自分一人の成功で完結するものではありません。自分よりも助けを必要としている人の傍らに立ち、神様から授かった使命に応えるために、私たちは自分を磨き、鍛えるのです。それこそが「神と人に仕える」ということの真義です。

今年一年、勉強に悩んだり、進路に迷ったりする日もあるでしょう。人間関係に疲れ、恋愛が思うようにいかず、しんどい思いをすることもあるかもしれません。 しかし、そのすべての経験の先には、皆さんの「手」と「心」を必要としている誰かが、必ず待っています。皆さんが流す汗や涙は、いつか必ず誰かの涙を拭い、誰かを励まし、この世界を明るく照らす「光」へと変わります。私はそう確信しています。

唯一無二の自分を大切に。そして、神様と人から愛される啓明生として、誇りを持ってこの一年を歩んでいきましょう。 皆さんの2026年度の飛躍を、心から期待しています。

 

指宿 力

 

啓明学院中学校・高等学校
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