「好奇心」は未来を拓く(前編)

今年度より、折に触れて私の考えていることや、保護者の皆さんや生徒たちに伝えたいメッセージを「校長コラム」としてお届けすることにいたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

 

答えのない問いに向き合う「知的好奇心」

以前、啓明の図書室で面白そうなタイトルの本を手に取り、大変興味深く読んだことがあります。それは『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』というイギリスの物理学者スティーヴン・ウェブの著作です。

「宇宙はこれほどまでに広く、古い。ならば、地球外文明が一つくらい地球に到達していてもおかしくないはずだ。……しかし、彼らはどこにいるのか?」

物理学者エンリコ・フェルミが投げかけたこの問いに対し、著者は75もの仮説を提示しています。ある説は科学的に、ある説は哲学的に、またある説はユーモアたっぷりに「なぜ私たちは孤独なのか」を解き明かそうとします。

読み終えたとき、私の心に残ったのは、内容の面白さもさることながら、答えの出ない問いに対してこれほどまでに情熱を傾け、論理を積み上げる著者の「知的好奇心」への敬意でした。

 

未知に挑む姿勢こそが学びの理想

先日、非常に嬉しいニュースが飛び込んできました。私の高校時代の知人である、兵庫県立大学講師の鳴沢真也さんが、新たに「地球外知的生命探査(SETI)研究会」を立ち上げられたというのです。4月11日の「天声人語」(朝日新聞)にもこのことは取り上げられていました。

鳴沢さんは、長年この分野の第一線で活躍されている日本を代表する天文学者です。彼が今、改めて研究会を組織し、本格的な探査に乗り出すというニュースを聞き、私は高校時代の彼の瑞々しい瞳を思い出しました。SETI(Search for Extra-Terrestrial Intelligence)という研究は、すぐに何かの役に立つ技術を生むわけではないかもしれません。しかし、「宇宙に仲間はいるのか?」という根源的な問いを追究することは、私たちの文明そのものを客観的に見つめ直す、最高にエキサイティングで知的な「遊び」のようにも映ります。

私が生徒たちに伝えたいことの一つに「好奇心を絶やさず、物事を面白がって取り組むこと」の大切さがあります。中学生・高校生は、どうしても「進学に役立つか」「将来の得になるか」という効率性を求めがちです。しかし、真に深い学び、そして後に大きな成果を生む原動力は、常に「なぜだろう?」「もっと知りたい!」という、純粋で、時に一見無駄に見えるほどの熱中にあるのではないでしょうか。鳴沢さんのように、高校時代の興味を一生の仕事へと繋げ、さらに新しい組織を立ち上げて未知に挑もうとする姿勢。これこそが、学びの理想の姿のように思います。

>>>後編に続く

 

指宿 力

 

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