KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

芸術鑑賞会 歌舞伎

2021年11月3日

  先日、大阪松竹座で芸術鑑賞会を行いました。本当に久しぶりでした。今回観劇したのは「GOEMON」という現代的な要素も取り入れた歌舞伎でした。中高分かれての公演を観ることが出来たことは本当に嬉しく、楽しい時間でした。また希望された多数の保護者の方々と共に観ることができたことは幸いでした。もちろん感染状況が落ち着いているとはいえ、校外で鑑賞会が実施できたことは、保護者の皆さんお一人お一人のご理解があってのことと感謝しております。ありがとうございました。

 

大阪松竹座での感染症対策は徹底されていました。花道付近の座席は数列着席できませんでした。また、役者さん達へのお花の贈答なども、現在は断っておられるとのことでした。

 

鑑賞会の準備を進めているときのことです。「中高生が歌舞伎鑑賞をするのなら、是非イヤホンガイドを借りた方がよい」とのアドバイスを本校の卒業生の保護者の方(仮にAさんと呼びます。後藤先生の中学以来の友人です)からいただきました。このアドバイスは、主演の片岡愛之助さんのお連れ合いである藤原紀香さんがAさんに伝えてくださったものです。「イヤホンガイドは、初めて歌舞伎に触れる中高生にとって、古典芸能の魅力を理解するために大変役に立ちますよ」とのことでした。

確かに生徒の大半は歌舞伎を鑑賞するのが初めてでしょう。また教職員でも、歌舞伎をきちんと理解して観る知識を持っている者はあまりいないと思います。それが有効であることは分かるのですが、イヤホンガイドをお借りすると、一人当たり700円かかるとのことで、全校生徒、教職員分をお願いするとなると、総額100万円近くなります。公演の数日前にそのアドバイスをうかがいましたが、急遽、捻出するには少し難しい額であるとお返事させていただきました。

 

ところがそのお返事をした翌日、大阪松竹座の担当者の方から連絡をいただきました。「今回の観劇に当たって、啓明学院の生徒、教職員にはイヤホンガイドを無料で使っていただきたい」とおっしゃるのです。それは「役者さん達からも、『是非、解説を聞きながら、歌舞伎の面白さに触れて、心から楽しんで欲しい!』とのお声がけあったので」とのことでした。

突然のことに我々教員も恐縮するばかりでしたが、当日はイヤホンガイドの解説に導かれて、このシーンでこの音楽が使われている理由も、他の演目の有名なシーンを応用した演出も、きちんと理解しながら観ることが出来ました。

 

当然、生徒たちの反応もよく、最初から最後まで飽きることなく食い入るように観ていましたし、力一杯拍手する様子に楽しんでいることがよく分かりました。

途中、片岡愛之助さんと、女形を演じておられた中村壱太郎さんのお二人のコミカルなやり取りのシーンでは啓明学院のスクールモットーを台詞に入れてくださり、役者の皆さんの暖かいお心遣いを感じました。終演後、中村壱太郎さんは、ご自身のTwitterで啓明生へのメッセージもあげてくださいました。こうしたことから、役者の皆さんの思いに生徒たちは直接触れたようで、演目の素晴らしさに加えて、歌舞伎をいっそう身近に感じるきっかけとなっています。

さらに後日、片岡愛之助さんの印の入った感謝状をいただきました。これはまた校長室前の掲示板に貼っておこうと思いますが、こういったサービスも賜り、本当に感激しております。

 

現在、劇場での公演も難しい状況が長く続いています。歌舞伎という古典芸能に関わっておられる方々が、伝統を継承することの難しさに加えて、事業を継続する難しさにも直面しておられるのではないかと思います。しかし、こうして中高生への公演の機会を通して、その面白さ、奥深さを伝えようとしている関係者の皆さんの真摯な思いに触れ、大変強い感銘を受けています。生徒たちはもちろんのこと、私も今回の観劇を通して歌舞伎の面白さの一端に触れ、心を揺さぶられましたので、これからも是非機会を設けて劇場に足を運びたいと思います。

 

啓明学院は再来年には百周年を迎えます。その伝統ある学校の歩みを、私たち教職員は委ねられている存在です。ですから私たちにはその伝統を受け継ぎつつ、この時代の歩みに適う新たな挑戦をしながら、啓明学院をさらに良い学校として次代に引き継ぐ大きな責任があると常々思っています。

今回の片岡愛之助さんや共演者の方々、大阪松竹座の皆さんの思いに触れる中で、皆さんのご厚情に深く感謝するとともに、次世代への責任も強く心に感じ、襟を正す思いを与えられた歌舞伎鑑賞でした。

 

 

指宿 力