KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

応援の力

2021年11月8日

先日、関西学院第3フィールドで行われたアメリカンフットボール部の試合でのことです。勝てば兵庫県大会優勝となるこのゲームは、本校と関西学院高等部の対戦となりました。今年初めての顔合わせでしたので、試合前からどのような試合展開となるのか、楽しみ半分、不安半分でした。アウェイ特有の緊張感が漂うのを感じながら、私はスタンドの片隅でキックオフを待っていました。

開始早々、不安は的中し、長いパスを決められ、いきなりゴール前まで攻め込まれました。おまけにそのプレー中に本校の反則があり、審判によってボールが置かれたのは自陣7ヤードと絶体絶命の状況となりました。もう相手チームの先制点は仕方ないな、観ている誰もがそう思ったのではないでしょうか。

 

しかし、その頃、フィールドの雰囲気が急に変わり始めていたのです。

というのは、この日、いつも選手達を応援するチアリーディング部の来場が遅れていたのですが、学院での文化祭リハーサルを終えてようやく到着し、彼女たちの声がフィールドに響き始めたからでした。

 

始まったばかりのいきなりの猛攻に少しシュンとなった啓明応援席が、チアの部員達が大きな声で選手達を鼓舞するのに合わせ、急に活気づいてきました。選手達はその声に押されるように集中力を高め、ゴールを守りました。そして、あと数インチというところまでで相手の4回の攻撃を止めたのです。そこではロングパスを決められた責任を感じていたであろう1年生のTくんの、相手を後退させる果敢なプレーや、絶対に点はやらないぞ、という守備陣の踏ん張りを観ることができました。

その後、啓明の攻撃陣も、その勢いのまま順調に点を重ね、前半が終わってみれば18-0という上出来のゲーム展開となっていました。

 

この日のチアリーディング部は素晴らしく、まさに神がかっていると思うほどでした。ハーフタイムショーの演技は完璧でした。ダンスは、素人の私でもわかるほど、キレッキレで元気あふれるものでしたし、アクロバティックなスタンツは、全員の演技が失敗なしの「全クリ」(全部クリアー)でした。

 

後半に試合巧者の関学高等部の猛追を受けながらも、終わってみれば18-6で勝利。4年ぶりの兵庫県大会優勝を果たすことができました。もちろんフットボール部員達にとって、真の目標はまだまだ先にあると思います。次戦からは、「負ければ3年生は引退」というプレッシャーのかかる中での全国大会となりますが、地に足を付けて、さらにチーム力を挙げてほしいと思います。

 

この日は、フットボール部員たちの頑張りとともに、チアリーダー達の与えてくれるエネルギーが大きく勝利を後押ししてくれたことが印象に残りました。おそらく会場にいた方々皆が、そのような「応援の力」を感じたのではないかと思うのです。

 

チアリーディング部は、テレビ取材を受けることもある、華やかで、目立つ機会の多いクラブです。コロナ禍で依頼される数は減りましたが、それでも様々なところから演技依頼を受け、校外での活動も盛んです。

その一方で、チアリーディング部は独立した練習場所を持っているわけではなく、ふだんはグラウンドの一角で練習しています。そのトレーニングは地味なことのほうが多いです。また、跳んだり跳ねたり、持ち上げたりするので、怪我のリスクと隣り合わせでもあります。

 

それでも、こうした試合応援を通して、「元気・勇気・笑顔」がモットーのチアリーディング部の活動が、選手達に励ましを与え、チームを勢いづかせるものであることを教えてくれます。そして、その演技に保護者の皆さんや我々教師もが胸を熱くし、力を与えられています。

そこにはチアリーディング部の生徒たちの熱心な取り組みもさることながら、保護者の皆さんの献身的なサポートや顧問の先生、コーチ達が本気で部員達に向き合っていることも大きく影響しているだろうと思います。人間的な成長が良いパフォーマンスに繋がると信じて、人間教育を大切にするからこそ、ぶつかる壁もあることでしょう。そうした困難を乗り越えて生まれるチアリーディング部の魅力が、年々高まっているように感じています。

 

これからも啓明を代表する応援団として、向上心を持ち続ける演技者として、気品ある活動を続けてほしいと願っています。日々の鍛錬から生まれる、チアリーディング部の皆さんの「応援の力」を感じながら、秋の一日を過ごしました。

 

指宿 力