KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

神様に与えられた賜物を活かし、よりよい世界をつくる人になろう

2021年12月22日

2学期終業式のメッセージ

 

昨日のクリスマス礼拝は、多くの奉仕者の働きを得て、恵みに満ちたものとなりました。

出演者の皆さん、さまざまな舞台裏の仕事を担ってくださった皆さん、ありがとうございました。

 

コロナに翻弄されたこの1年でありましたが、学校行事としても終わりにこのような礼拝を守ることができて、本当に嬉しかったです。去年の12月21日の記録を見ると、1日の陽性判明者数は1,812名とありました。

今年1年、ピークを迎えたときには25,995名まで増えましたが、昨日は152名と随分減少しています。

毎日に学校に来るのも少し安心していると思いますが、昨日の生徒会長 田谷さんのお祈りにあったように、まだまだ予断の許さない状況の中にいることを忘れることなく、互いに気をつけあって、安心できる学校生活を皆で協力して創り出していきましょう。

 

さて、皆さんはこの2021年が始まるとき、どんな1年になればいいなと考えていたでしょうか。今年1月に受験生だった人たちにとっては、志望校合格が当然の願いだったことでしょうが、それ以外にもいろいろと願っていたことでしょう。この1年を過ごして、願い通りのことを達成できた人もいれば、もうちょっとで適わなかった人もいるでしょうし、そもそも妄想だけで終わり、特に何もしなかった、という人もいることでしょう。それぞれの反省もあると思いますので、この年末、一度じっくり自分と向き合って、1年を振り返りながら2022年はどんな歩みをしようか、思いを巡らせてほしいと願います。

 

寝ているときに見る幻覚のようなものも夢、と言いますが、将来自分の実現したい願いや理想も夢、と言いますね。皆さんには是非、壮大な夢を持つ人であってほしいと願っています。偉人と言われるような、何かを達成した人たちも、きっと大きすぎるかもしれないほどの夢を見て、時に笑われるようなことがあっても、愚直に歩みを進めたことと思います。皆さんも、でっかい夢を見て、到達を目指し、一日一日を前向きに歩んでほしいと願います。

 皆さんのロールモデルとなるのは、卒業生たちの姿でもあります。皆さんと同じように、この啓明で多感な10代を過ごし、啓明のスピリットを土台とした精神を持って社会に旅立っているのが卒業生だからです。時折便りをくれる人の中には、本当に大きな夢に向かって頑張っている人たちがたくさんいます。

 その中に漫才師を目指して芸人の養成所に在籍している二人がいます。彼らは、インダスガンダスというコンビ名で今年のM-1にも挑戦していましたが、2回戦で敗退していました。それでも養成所の発表会などで評価をいただいているようです。まだまだアマチュアで、駆け出しにもなれていない彼らですが、これからどんな活躍をしてくれるか楽しみにしています。お笑いという厳しい世界で、自分たちの力が通用するのか、不安もあるでしょうが、きっと彼らは、なりたい自分像を高く思い描き、夢に向かって毎日頑張っていることと思います。彼らがひとかどの漫才師となって、いつか母校に凱旋してくれる日を楽しみにしていますし、その時が来たら、心を込めて準備をしてお迎えしたいものです。

 

さて、最近のニュースに取り上げられていることで、どうやらこの年末年始、牛乳が大量に余りそうだぞ、というものがあります。知っていましたか?コロナ禍で牛乳の需要が減ってしまったことが原因のようですが、日本全体で余ることになりそうな牛乳5,000トンを捨てなければならないというのです。牛乳の賞味期限はそう長くありませんから、仕方がないのかもしれません。

 捨てるくらいならバターやヨーグルトにしたらいいのに、とも思いますが、どうやら加工する施設のキャパシティーを大幅に超える量の牛乳が余るらしいのです。もちろん牛乳を搾らないと牛が病気になってしまうので、搾乳しないわけにはいけません。毎日捨てることになることを承知で絞り続けなければならない生産者の方々のことを思うとそれもつらいものです。

 これを解決する方法はただひとつ、皆さん、牛乳を飲んでください、というお願いをすることだけだということで、J-ミルクという団体は12月25日から1月3日まで、全国の皆さんどうか1リットルパックを毎日買ってください、というお願いをしています。もちろん牛乳は人によって体質に合う、合わないがありますので、誰にでもできることではありませんが、協力できる人は食品ロスを防ぐためにも、家族と相談し、家庭で取り組んでみたらと思います。

 

このニュースを聞いて、私は黒澤 酉蔵(くろさわ とりぞう)という人のことを思い出していました。黒澤 酉蔵は雪印乳業、いまの雪印メグミルクという会社が始まるきっかけを作った一人で、日本の酪農の発展に貢献した方です。

 牛乳が今のように私たちの食生活に入ってきたのは明治以降のことで、その頃、オランダやデンマークの酪農を習い、日本に広めた人たちの功績が大きいようですが、酉蔵は循環農法という、今で言うSDGs的な発想で、新しい時代の酪農を柱にした農業のあり方を創り出した人で、「日本酪農の父」とも言われる人です。

 1885年、明治18年、茨城県の貧しい農村に生まれた黒澤 酉蔵は、14歳で東京に出て働いていました。16歳のときに足尾銅山鉱毒事件で被害者に寄り添った活動をしていた田中 正造と出会い、一緒に活動をします。足尾銅山鉱毒事件とは、銅を採掘する銅山から大きな公害が発生し、栃木県や群馬県の周辺の人々が大変苦しい思いをした、明治時代に起きた大事件です。栃木県の政治家だった田中 正造は、辛い思いをしている農民側に立ち、抗議活動を行いましたが、政府になかなかまともに取り合ってもらえませんでした。田中は、それならばと明治天皇にその事実を直接訴えようとして逮捕されたことで、今に名前を残している人です。

 その田中 正造に思いに共感し、一緒に活動をするようになった黒澤 酉蔵は、自身も逮捕されてしまいます。そして牢屋に入れられたときに、酉蔵は差し入れられた聖書に出会い、これを一生の自分のものさしにしようとする決意をします。牢屋から出た酉蔵は、学校に戻った後、20歳のときに北海道へ渡り、牛飼いの仕事を紹介されます。そして「役人に頭を下げなくてもよい」、「牛が相手だから、ウソをつかなくてもよい」「牛乳は人々を健康にする」という酪農三得を教わり、酉蔵は一生を酪農に捧げる決心をします。

 一頭の乳牛から酪農を始めた酉蔵は、おりしも開拓が進んでいた北海道で、痩せた土地を耕す人々が健康を害していく姿を見て、体を強くするためには牛乳を飲んでもらわなければ、と一生懸命牛乳作りに励んでいたようです。酉蔵はリヤカーに牛乳やバターを乗せ、開拓民を健康面で支えようとしたのです。

 そして酉蔵は、これからの酪農のあり方を変えていく大きな夢を思い描き、少しずつ事業を大きくしていきました。それが「雪印」につながっていったのです。また、信仰を持ちながら、酪農に向かう酉蔵の思いは、北海道江別市にある酪農学園大学の開校につながっていきました。酪農学園大学は、キリスト教の教えのもとに「神を愛し、人を愛し、土を愛する」ことに徹した人間教育主義を建学の精神とし、酪農家や獣医師を志す人々の学びの場になっています。

 今、牛乳が余っていて、それを捨てなければならない、というのは酉蔵が聞いたらどう思うでしょうか。

牛乳を飲める人はできるだけ協力したいものですね。

 また、現在の私たちの食生活は、酉蔵の思い描いた夢の一部分でもあります。一人一人の思い描く夢の影響力がどれほど大きいか考えると、ちょっとワクワクするものです。

 

さて、皆さんは、どのような夢を思い描いて2022年をスタートさせるでしょうか。皆さんの夢を聞かせてくれれば嬉しいです。酉蔵のように、貧しい人たちに寄り添い、よりよい世界を作りたいという夢を果たした人もいました。それは神様の御旨に適う、尊い働きです。皆さんにも多くの賜物が与えられているのですから、それを活かし、今より少しでも良い世界を作る働きをする人となっていきたいものですね。

 今日、2学期の終業の日を迎えています。今はクリスマスシーズンでもあります。昨日のクリスマス礼拝で、下土居さんが朗読してくれたメッセージを、一人一人、心の深いところで受け止めてくれたことと思います。

 このような時代に、私たち一人一人にも期待されていることがあることを覚えたいと願います。身近な人の役に立つことも、将来の働きも、すべて神様の願いです。クリスマスに、はかない星の光が世界を希望で満たす喜びを告げ知らせたように、皆さん一人一人の学びとチャレンジが世界の喜びの一歩であることを信じてやみません。

 

皆さん、一人一人の良いクリスマス、そして良い年末年始をお祈りしています。

3学期の始業式に、元気な顔で会いましょう。

 

 

 

 

指宿 力