KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

入学式 式辞 (高校)

2022年4月2日

高校入学式のメッセージ

 

新入生の皆さん、啓明学院高等学校ご入学本当におめでとう。

ここには新しくその制服に身を包んだ人もいれば、中学を啓明学院で過ごし、高校生になった人もいます。そんな違いはありますが、いずれにしても新しく啓明学院高校に入学した皆さんです。手を携え、歩みを共にし、真の友情を育んでいきましょう。今日から皆さんが、どんな高校生活を始めるのか、本当に楽しみにしています。自由に溌剌と、何より啓明学院の生徒として、臆することなく自分自身の啓明ライフを作り上げてください。

 

保護者の皆さま、お子様のご入学おめでとうございます。

数ある選択肢の中から、啓明学院高校を大切なお子様の学びの場として選んでいただいた期待を、教職員一同、襟を正して受け止め、その成長の日々を共に歩んで参ります。思いも掛けないことが起こりえるこの世界で、一人一人の生徒が、神様と人に愛される人間であることができるよう、そして自立した人間として与えられた多くの才能と力を活かして歩めるよう、ご家庭と連帯しながら、私たち教職員も心尽くし、思いを尽くして参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、高校生の皆さん、フェイク、という言葉があります。フェイクと言えば、FAKE NEWS、FAKE動画など、FAKEには「悪いもの」というイメージがあるのではないでしょうか。なぜならFAKEは、「偽物」、「でっち上げ」という意味があるからです。

 

その一方で、英語の慣用句に次のようなものがあります。

Fake it till you make it.

 

Fake itは、「知っているふりをする」、「ごまかす」という意味です。

Make itは成功する、「うまくいく」、「無事にやり遂げる」という意味です。

 

そうすると、Fake it till you make it.は、「うまくいくまでは、うまくいっているふりをする」という意味になりますね。もう少し意訳すると、「なりたい自分の姿があるなら、すでにその姿になったかのように振舞え」ということですね。

 

この言葉を、私はアメリカの社会学者エイミー・カディのTED TALKで知りました。エイミー・カディさんは、教室の中での積極的な姿勢の学生と消極的な姿勢の学生を比較して、成績に明らかに差が付くことを指摘します。もちろん積極的な姿勢の学生の成績のほうがよいという研究結果が出たそうです。これを聞いて皆さんはどのように感じますか。「よーし、それなら積極的にやってやろうじゃないの」と素直に思い、実践しようとする人もいれば、「いやあ、自分はそれほどね~」と尻込みしてしまう人もいることでしょう。

私たちは謙虚でいることや、場の雰囲気を守ることを大切にするあまり、しばしば集団の中で消極的な姿勢でいることに安住してしまったり、美徳を感じてしまったりすることが多いかもしれません。積極的に振る舞おうとしても、上滑りすることが怖かったり、疲れてしまったりするかもしれません。積極的な人と自分を比較して、引いてしまって消極的にならざるを得ないことがあるかもしれません。しかし、本当は積極的にやりたいと思っているのに、いろいろな理由をつけて尻込みしてしまうならば、それはとてももったいないことではないでしょうか。

 

啓明学院はキリスト教主義の学校です。教育の土台を聖書においている学校です。その聖書に示される真の神様の教えは、私たちを真理へといざない、励ましと支えを与えてくれるものです。だからこそ、聖書は2000年の歴史を超えて今も世界中で読み続けられ、信仰の源泉となっているのです。その聖書の神様のメッセージは、皆さん一人一人に向けて送られています。そして、皆さんがここにいることや、新しく始めようとしていること、そうなりたいと思う自分であろうとすること、それらすべてが、神様の導きであるというのが聖書のメッセージの一つです。

だから、怖かろうが、足がすくもうが、神様があなたを励まし、力づけてくださっていることを励みにし、力にして、そうなりたいと思う自分に向かって大きくジャンプしてほしいのです。啓明学院では、そのことをチャレンジと言っています。

 

チャレンジとは「『大変なこと』や『課題・問題』に挑戦する」ということです。だから、なりたい自分になろうとすることも、ビッグチャレンジです。もちろん、なかなかチャレンジに勇気が出ないとき、自信がないときもあるかもしれません。

 

しかし、神様が背中を押し、あなた自身がなりたい自分になろうとする、その新しい自分自身になることを期待してくださっている、そう思えるならば、皆さんはきっと神様を身近に感じることもできるでしょう。神様が私たちをいつも励まし、支えてくださり、よい道へと導いてくださっていることを私は信じます。

 

啓明学院は、生徒一人一人がありのままの自分、そうあろうと心に決する自分でいることを皆で大切にしあえる学校です。クラスメイトのチャレンジを応援しようとする雰囲気があります。そして、他人のチャレンジに、「お前なんか無理や」と笑ったりしない、あたたかな校風があるのです。だから、恐れずチャレンジする皆さんであってほしいのです。そのチャレンジの先に、皆さんが本当になりたい自分になる道が開かれているのです。

 

Fake it till you make it. の精神は、きっと皆さんの歩みを力づけてくれるのではないかと思うのです。そうなりたい自分であろうとする中に、Fakeではない、本物の自分を作り上げるチャンスがきっとあるはずです。

もちろん、ただ一度や二度のチャレンジが皆さんをなりたい自分にいざなってくれる訳ではありません。きっとそれは毎日の授業や行事の中で、皆さんに問われてくるのであり、一つ一つの積み重ねが自分作りには必要だと考えています。

時に上手くいかないこと、失敗することもあるでしょう。むしろその方が多いかもわかりません。しかし、失敗にも意味があるものですし、その失敗を価値あるものに変えていこうということこそが大切です。失敗を恐れてチャレンジを避けることの方が、失うものは多いでしょう。今までの啓明生がそうであったように、皆さんも大いなるチャレンジャーであってほしいのです。

 

少し前に、大変心に残ったテレビコマーシャルがありました。それは東北の震災の翌年、あまりにも広範囲の津波による被害、原発事故にうつむく、日本社会を励ます目的で作られた、ある自動車メーカーのCMのコピーです。それは今の私たちの心にも響く、熱いメッセージです。

 

がんばっていれば、いつか報われる。

持ち続ければ、夢はかなう。

そんなのは幻想だ。

たいてい、努力は報われない。

たいてい、正義は勝てやしない。

たいてい、夢はかなわない。

そんなこと、現実の世の中ではよくあることだ。

けれど、それがどうした?

スタートはそこからだ。

技術開発は失敗が99%。

新しいことをやれば、必ずしくじる。

腹が立つ。

だから、寝る時間、食う時間を惜しんで、何度でもやる。

さあ、きのうまでの自分を超えろ。

負けるもんか。

 

「負けるもんか」の精神は、簡単に諦めず、困難な課題にも立ち向かう力を付けようという、啓明学院で身につけてほしい力の一つ、やり抜く力=Gritを表しているように思います。皆さんもぜひ、「負けるもんか」の精神で、難問に向き合っても、へこたれずやり抜こうと頑張る力をここで身につけてほしいのです。

 

そうなりたい、そうありたい自分になることとは、うわべの自分の思いつきではなく、自分の心の一番深いところにある、本当の自分が望んでいることは何か、本当の自分とは何者か、を問い続けてしか見ることのできないものです。そんな自分に出会うことは、言うほど簡単なことではないかもしれません。しかし、皆さん自身がここで一生懸命に学校生活や自分自身のチャレンジに取り組む先に、きっと道は開かれることでしょう。

 

今、人間にとって最も尊い平和が引き裂かれる、シリアスな出来事が連日報道されています。ウクライナの戦火の中にいる人たちのことに世界が心を痛めています。もちろん、シリアやウイグル、ヘイトクライムや弾圧、と挙げれば数限りなく、平和ではないことが世界では起こっています。難しい課題がこの世には多く横たわっていますが、へこたれず、平和へのチャレンジを辞めない私たちでありたいと願います。

 

先ほど、求めなさい、という聖書の言葉をお読みいただきました。

「求めなさい、探しなさい、門をたたきなさい」

これは聖書の原文では、やり続けること、現在進行形の意味で記されているものです。ですから、こう言い換えることができるでしょう。

 

求めるものがあれば、神様に熱心に求め続けなさい

探しているのなら、諦めず探し続けなさい

開けてもらいたいのなら、何度でも門をたたきなさい

 

求め続ける、探し続ける、門を叩き続ける。そこに必要なのは、一筋縄ではいかないことに粘り強く取り組み、上手くいかなくてもへこたれずに何度でも挑戦する、そんな力です。きっとその学びには、皆さん自身が隣にいる人や家族や社会を温かい心で包む、そしてこの世に必要とされ、神様に愛される、あるべき啓明生の姿が見えてくることでしょう。そして、その学びの先にこそ、啓明でよかった、啓明でなければならなかった、と心からそう思える日があるはずです。その日を楽しみにし、いよいよ始まる高校生活を充実したものとしていきましょう!皆さんのこれからを心より楽しみにしています。

 

以上をもって式辞といたします。

 

 

指宿 力