KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

キャンプする学校

2022年6月15日

6月第2週は「水無月週間」と称し、キャンプと保護者面談を行う1週間としました。

3年ぶりとなる前島キャンプは天候にも守られ、たいへん充実したものとなりました。入学時に実施が適わなかった中学3年生を皮切りに、高校1年生、中学1年生のオリエンテーションキャンプを1泊2日で行いました。久しぶりのキャンプで、生徒たちの活き活きとした姿を見ることができ、本当に実施してよかったと思いました。ご理解、ご協力くださった保護者の皆さんに感謝するとともに、私たちの訪問を大歓迎してくださった前島の方々にお目にかかれて幸福な思いに満たされました。

 

啓明学院の前島キャンプでは、メインプログラムとして中学高校ともに陶芸を行います。また中学生はメチャビーを、高校生はチャレンジハイクをそれぞれ実施します。

メチャビーはキャンプ場近隣の農家の方が提供してくださった休耕田を舞台に、泥田の中で「メチャクチャなラグビー」と表現する、文字通り自由なラグビー形式のゲームです。ボールを持って相手ゴールにトライすれば1点を得ることができるのですが、ボールを持っている人がディフェンスに捕まえられると、そのボールを味方に渡してボールを繋ぎます。ボールを持ったまま倒れるとすぐにボールを手離すこと、倒れた人には手を貸して立たせること、そしてボールを繋ぐために投げるときに相手を確かめずに無責任なパスをしないこと、などがルールです。

ゲーム中は積極的に参加することをうながす教師やリーダーに励まされ、開始間もなく泥んこにまみれます。それでも一心にボールに向かう中で、仲間と協力して一つのトライを目指すことや無責任な振る舞いをしないこと、安全にゲームを進めるために少ないルールを利己的に解釈しないこと、何より仲間のために泥にまみれることを恐れないことを体験的に学びます。

 

 

高校生のチャレンジハイクでは、島内を歩いて巡ったり、啓明学院所有の海岸でカッター(大型の手こぎボート)に乗ったりします。カッターで他の班と競争して勝利を目指す中、力を合わせることで得られる達成感を感じたり、マリンスポーツの面白さも味わったりしたことでしょう。

 

 

陶芸はキャンプ場内にある啓明窯の管理もしてくださっている、陶芸作家の大石橋宏樹先生の指導で行いました。本校美術科の加藤先生や大石橋先生のお弟子さん達も一緒に制作を支えてくださいました。土は大石橋先生たちが時間をかけて造られたものを使い、備前焼として仕上げていきますが、先生ははじめに造り方とともにこのプログラムの意義についても話してくださいます。生徒たちは、自分の受験やこれまでの歩みの中で支えてくださった方々へ感謝の思いを込めて、土をひねります。

もちろん最初から上手くいくことは難しく、何度かやり直す生徒もいますが、限られた時間を目一杯使って丁寧に作り上げようとする姿に、胸を打つものがありました。

 

 

夜はファイアー場に集まり、薪を囲んだ礼拝形式のキャンプファイアー「カウンシルファイアー」を行いました。厳粛な雰囲気の下、歌を歌い、聖書の言葉に耳を傾けた後、一人一人がこれからの学校生活に向けた決意の言葉を語ります。それぞれが目標や夢を実際のものにするため、これからどのように歩むのかを皆の前で語るのです。それぞれの決意を頷きながら聞いていると、私も次第に胸がいっぱいになっていく感覚を覚えました。

 

 

また、このキャンプには上級生もリーダーとして参加してくれています。中学3年生、高校2・3年生、そして大学生がそれぞれ責務を託され、後輩達の成長の歩みを支えてくれていました。啓明学院のキャンプがそのような献身的な上級生の働きに助けられていることに感謝します。そして、リーダー自身がその経験から大きく成長していく様を間近に見ることができることもキャンプの醍醐味の一つです。

 

礼拝をもって始まり、礼拝をもって終わる啓明学院のキャンプが今年も神様のお守りの内に終了できたことを感謝いたします。やはり私たちにはキャンプが欠かせないものであることを思います。それは日常生活ではなかなかできない協働と共創の経験であり、プログラムの中に散りばめられた様々なチャレンジの機会が生徒たち一人一人を啓明生としてグッと成長させてくれるからです。

 

 

夏には青島キャンプも実施を予定しています。日常が少しずつ戻る中、私たちはこれからも「キャンプする学校」であり続けたいと願います。神様の創造の神秘を身近に感じる自然の中で、自己の存在について考えることや、仲間との宿泊や調理の経験は生涯の糧となるからです。

また、キャンプできる環境を整えてくださった方々や、キャンプ場を共に造った卒業生の働きへの感謝の思いも共有し、その方々の思いにも適うキャンプを、できうる感染症対策も丁寧に講じながら、継続していきたいと願います。そこに綿々と続く、啓明生がより啓明生となるキャンププログラムの意味が示されることでしょう。

 

今年のキャンプ中、見上げると多くの星が輝く夜がありました。夜空を見上げながら、啓明学院のキャンプを経験する生徒一人一人が啓明生のスピリットを豊かに継承し、たくましく、そして思いやりに満ちた人間として育ってほしいと祈りました。それはきっと生徒たち一人一人の保護者の方々も共有してくださっていることと思います。そしてキャンプを経験して得たことが自分自身の日常に活かされ、これからの歩みの上にも大きな力となることを願っています。一足飛びにとはなりませんが、日々の歩みを進める中に、一人一人のよい成長の姿を見ることを楽しみにしています。

 

指宿 力