KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

ひるまずにお前の立つところを深く掘り下げよ!その下に泉がある!

2022年9月2日

9月1日(木) 2学期始業式のメッセージ

 

皆さん、おはようございます。

2学期の始業式を迎えました。夏休み前、水辺の事故を心配するお話しをしましたが、今のところ皆さんの事故などは聞いていないので、少しホッとしています。ただ、感染状況がすっかり落ち着いているということでもありませんので、新学期は9月10日(土)までを「思いやりウィーク」と名付け、互いに配慮しあいながら、油断せず、基本的な感染症対策を続けていきましょう。

「思いやり」というのは、皆さんそれぞれに家庭での様子が異なり、同居する家族に高いリスクをお持ちの方がいる家もありますので、クラスメイトにそのような人がいるかもしれない、目の前の友人の家がそうかもしれないと、想像力を持って、互いに配慮しあって学校生活を過ごそう、という意味です。

この「思いやり」という言葉を、皆さん一人一人が大切にして、自分の行いとすることによって、安心できる学校生活を過ごすことができるでしょう。この2学期当初、しばらくの間は、先生方と共に「思いやりウィーク」に相応しい行動を続けましょう。よろしくお願いします。

 

さて、皆さんの夏休みはどのようなものだったでしょうか。

クラブ活動に一生懸命取り組んでいた人たちの姿を学校で見ることもありました。また、多岐にわたる皆さんの活動の報告を先生方から聞くことも多く、頼もしく感じることも度々でした。

中学3年生と2年生の青島キャンプは、当初の予定よりも宿泊数を短縮しました。それでも、短いなりに凝縮したプログラムで、多くの経験を積んでくれたと思います。中学2年生のキャンプは、カウンシルファイヤーや全員ワークもありました。中学生活の折り返しとして決意を新たにして、この新学期を迎えている人も多いことと思います。ぜひ自分の決意に適う学校生活を大切にしてください。

 

キャンプを前にした7月の終わりに、安川先生の歌を中心とした瀬戸内市の音楽祭、オリーブコンサートが牛窓で行われました。安川先生の迫力ある、優しい歌唱とともに、ふだんお世話になっている方々が所属されている地元コーラスグループの合唱も聴くことができて本当によかったです。

 

校内でのクラブ活動はもちろんのこと、クラブの合宿も盛んに行われていました。サッカー部、ソフトテニス部、アメリカンフットボール部、剣道部や社会部研究会が校外での経験を積んでいます。

また、延べ人数が300人、全校生徒の約4分の1が参加したサマープロジェクトは、すでに啓明学院の夏期プログラムの柱と言ってもよいでしょう。3泊4日で行われた、広島県大崎上島での体験型ハーフエマージョンプログラムでは、参加した人たちが、英語も使いながら地域の方とも繋がる、多様な学びを経験しました。東京訪問チームは、国会体験だけでなく、地元選出議員さんの計らいでふだん見ることのできないところにも案内していただいたようで、特別な経験をしましたね。瀬戸内海フィッシングでは、釣り具メーカーのシマノさんが全面協力してくださったこともあり、大漁だった様子がホームページやインスタグラムにも掲載されていましたね。その他にも、多文化協働プログラムや染色体験、美術家のアトリエ訪問、サイクリング、シロアリ採集から解剖など、全部で13のプログラムが実施されています。これらの様子は、校長室前の掲示板でも紹介しているので、ぜひ観に来てくださいね。

 

そして、チャレンジしたい人に資金援助をするという、なかなか普通の学校ではやりそうのない、アンビションブースターには高校生が1名、名乗り出てくれました。またあらためて活動報告を皆さんの前でしてもらいますが、大志を抱く啓明生を、本気で応援したいと思います。次年度もどんなチャレンジャーが出てくるか、楽しみにしています。

 

校外で活動する生徒を応援するために、8月に大阪で開かれた、大きなダンスフェティバルを観に行きました。高いレベルに挑戦している姿に大変感激しました。また、以前軽音楽部でコーチをしてくださっていた方がサポートする鈴木茂さんのライブコンサートにも行きました。才能がぶつかり合う素晴らしい演奏に感動しました。もちろん、私が知らないチャレンジをしてきた人たちも多いことでしょう。ぜひまた皆さんの取り組みを聞かせてもらいたいと思います。学校で披露が可能なものは、機会を見つけて、紹介してほしいと願います。

 

その一方で、このような私たちの日常の営みと同じ時間に、ロシアによるウクライナ侵攻は続いています。半年前、この戦争が始まった時には驚きを感じたのに、今は少しずつ慣れてしまっているのが実際です。しかし、あの悲劇がまだ続いていること、その戦火の中に多くの人が命を落とし、傷つき、心を痛めていることを忘れない私たちでありましょう。

 

私たちは、平和を祈る、という行動を持って、まず示したいと願います。そして、自分に何ができるかを自らに問いましょう。背景にある歴史を知りましょう。平和のために自らの生き方、それは人生の分岐点で何を選ぶか、というようなことですが、それを考えましょう。こうした行動は、自分の地平においてどう受け止めるかに繋がっていくことでしょう。自分自身の日常の取り組みを大切にすることは、何より、悪に対する小さな抵抗となることでしょう。そのような自らの生き方を前向きに開こうとする人々が集う世界が、大きな、大きな平和を実現する愛を創り出すのではないかと思うのです。

 

この夏休み中に観たドラマの中に出てきた一言がとても心に留まっています。それはドイツの哲学者ニーチェの「汝の立つ処深く掘れ、そこに必ず泉あり。」という言葉です。とても感銘を受けたので、この言葉を聞いた直後に、青島キャンプでお話ししたときにも引用したので、覚えてくれている人もいると思います。

この言葉は日本の哲学者、信太正三(しだしょうぞう)の訳では、『ひるまずにお前の立つところを 深く掘り下げよ!その下に 泉がある!「下はいつも――地獄だ!」と叫ぶのは、黒衣の隠者流に まかせよう。』となっています。

 

「ひるむ」というのは、怖じ気づいて前に進むことのできない様相です。ですから、「ひるまずに」とは、怖じ気づかず、大きな一歩を踏み出そう、ということです。勇気を持って挑め、と言ってもいいかもしれませんね。

勇気を持って、お前の立つところ、今の居場所、今置かれている状況、そこにいる自分を深掘りしてみなさい。と呼びかけています。

そこに泉がある。それは生きるに必要な水を湧き出す泉です。その水が自分自身を生きながらえさせる命の泉であり、乾くことのない永遠の泉があるのだよ。というメッセージなのです。

 

その泉へと自らの足下を深く掘る、とは自分自身の内面の深いところに目を向けていこうとする、内観、内省への導きです。それは本来、自分は何を願っている人間なのか、深く、深く、考えることです。しかし、そこにたどり着くためには、自分の弱い部分に仕掛けられる誘惑をくぐり抜けなければ、それはなかなか難しいところでもあります。

たとえば時間の使い方です。本当ならばこうすべき、こうしないとな、と分かっていてもスマホを握りしめ、5分10分のつもりが、長い時間になってしまい、結局しなければならなかったことができなかった、する気にもなれなかった、というような経験を持つ人もいるのではないでしょうか。それでは本来の自分にたどり着くことはなかなか難しいのでしょう。

 

だからこそ、そういった自分を律することのできないだらしなさといった弱さに、ひるまずに向き合い、打ち倒していかなければ、自分自身の足下にあるという価値ある泉にたどり着くことはできないのでしょう。ひるまずに自分の立つところにスコップを当て、掘り進めていくこと。それこそが本当の自分との出会いであり、そこで本当の自分が願っているように生きようとすることこそが、命の泉、永遠の泉へとたどり着く人生の秘訣なのですね。

今日読まれた聖書の箇所で、詩編に記された「命の泉はあなたにあり、あなたの光に、わたしたちは光を見る、心のまっすぐな人の上に、恵みの御業が常にありますように」という聖句は、隠された命の泉が必ず皆さん一人一人のうちにあること、それは希望の光であることを示すものでもあります。

 

いよいよ今日は9月1日、2学期のスタートです。様々な行事もたくさん予定されています。毎日の授業、日々の課題に、啓明生らしく、前向きに、精一杯取り組んでいきましょう。

その一方で、忙しさに流されることなく、本当の自分は一体何を願っている人間なのか、何を期待されているのか、という本来の自分を見つめる皆さんであってほしいと願います。

そのことが自分の足下にある命の泉を探す歩みであり、その一歩一歩こそが平和への道を開くことを信じたいと願います。

皆さん一人一人が、チャレンジングで、充実した啓明ライフを共に過ごせることを本当に楽しみにしています。2学期も共に頑張りましょう。

 

指宿 力