KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

啓明女子サッカーの伝統を受け継ぐ者へ

2022年9月16日

9月11日(日)の午後1時から本校グラウンドで兵庫県女子サッカー選手権大会第1ラウンドAブロックの準決勝戦が行われ、本校サッカー部女子チームは強豪明石南高と対戦しました。この日はグラウンドに照りつける日差しも大変厳しかったうえ、高2部員は修学旅行を短縮して試合に臨むというハードスケジュールの中の一戦となりました。

序盤は啓明の運動量も非常に多く、一進一退の戦いが続きました。相手チームディフェンスの好守に阻まれ、なかなかシュート機会を作ることができませんでした。それでも再三、自陣に攻め込まれても素早くボールに向かい、上手にクリアしていました。

一瞬の隙を突かれて先制点を許してしまいましたが、その後も足を止めることなく、果敢にボールに向かっていきました。その啓明チームの戦いぶりは、観ていて誇らしく思うものでした。めまぐるしく攻守が入れ替わる攻防を観ていると、応援にも力が入りました。後半、加点されると、思い切った攻撃フォーメーションを取らざる得なくなりました。そこにカウンターの攻撃を仕掛けられたこともあり、さらに加点され、最終的には勝利を得ることができませんでした。

しかし、この日の啓明チームの戦いぶりは、一人一人のサッカーに対する情熱を終始感じるものでした。#9藤原さんの何度も右サイドを力強く突破するプレーや、#25前川さんの素早いボールへの寄せなどには、私のすぐ隣で観戦する男子サッカー部員から度々感嘆の声があがっていました。まさにチーム皆が、顧問の先生方やコーチと共に今夏の合宿で作り上げてきた全員サッカーを目の当たりにする思いでした。

 

啓明学院の女子サッカー部は、女子校時代に顧問をされていた中野孝先生、斉藤唯元先生の指導の下、全国大会常連校として名を馳せていました。全日本高等学校女子サッカー選手権大会では、第6回大会(1997年)、第9回大会(2000年)の二度、全国優勝も果たしました。

私が初めて高校3年生の担任を受け持った時、高校生として初めて日本女子代表に選出された藤村智美さん(現INAC神戸レオネッサ/スクールコーチ)がクラスにいました。現在のように、なでしこジャパンが注目される前のことでしたが、それでも日本代表選手です。女子サッカー部の仲間達はもちろんのこと、同級生皆がそのことを誇りに思っていました。藤村さんは浮かれることなく、教室ではいつも落ち着いた存在で、授業や学校行事にも真面目に取り組む姿勢に、さすが日本代表に選ばれる選手だなあ、と私は感心していました。

 

その後も、発足したばかりの女子のプロサッカーリーグであるLリーグ(現在のWリーグ)には藤村さんを始め、多くの啓明卒業生が様々なチームに入団し、活躍をしていました。

また、共学「啓明学院中学校」がスタートし、2004年にグラウンドが人工芝化されたとき、啓明卒業のLリーガーチームと、当時強豪だったTASAKIペルーレFCとのエキシビションマッチが行われ、有名選手が啓明グラウンドに勢揃いした試合を生徒たちと観戦したことも思い出深いです。

 

当時と現在のチーム状況は異なりますが、日曜日の試合を観ていても、懸命にボールを追いかける女子サッカー部員達がサッカーに情熱を燃やし、クラブを大切に思う気持ちには先輩たちと決して変わりがないと思います。日が暮れるまでグラウンドで地道な練習を重ねてきた日々の尊さは、何にも代えがたいものです。そして、そこには指導者が替わり、選手が替わっても、啓明のグラウンドで連綿と紡いできた女子サッカーの伝統があり、今の部員達は皆、その伝統を引き継ぐ一人一人でいることがよく分かりました。

 

試合終了後、スタンドで応援してくださった方々に整列して挨拶した後、ベンチサイドに戻った選手達は敗戦に非常に悔しい表情をしていました。炎天下、前半・後半合わせて70分以上グラウンドを走り続けた疲労も大きかったことでしょう。そんな、ややぐったり気味の選手達を、主将の#5新家さんは力強く鼓舞し、最後の整列をチームメイトに促しました。ベンチの近くには、顧問、コーチ達、そして応援に駆けつけてくれていた男子サッカー部員、卒業生達が集まりました。その中に私もまぎれていました。その我々に向かって、新家さんの「今日はどうもありがとうございました。後輩達をどうぞこれからもよろしくお願いします。」と挨拶をしました。そのメッセージは、私の心に、とてもとても重く響きました。顧問、コーチを務めてくれている西畑先生、下垣内先生、北原敏博先生や石原コーチも同じ思いを共有してくれたことでしょう。

 

今シーズンの最終戦をこうして終えましたが、部員一人一人が、啓明女子サッカーが大切にしてきた伝統を継承する者として、ここでの部活動を誇りに思い、その経験を糧に、これからの人生、胸を張って歩んでほしいと願っています。私にとっても、この試合で見せてくれた女子サッカー部員の皆さんの頑張りやこれまで日々懸命にサッカーに取り組む姿勢は、深い敬意を持つものでありましたし、励ましを与えてくれるものでした。(きっとご家族の方々をはじめ、応援していたすべての人にとっても共感していただけるのではないでしょうか。)そして、そのような力を生徒たちが与えてくれることに、改めてクラブ活動の意義を深く心に留めるものであります。この日の試合もまた、啓明学院の歴史の価値ある1ページであり、宝物です。本当にありがとう。

 

引退する高3の皆さんは、卒業まで、残る後輩達の練習に参加しようと思っているとのことで、大変頼もしいです。この後も、もうしばらくよろしくお願いしますね。そして顧問の先生方、コーチ達もしっかりそれを支えてくれることでしょう。私もグラウンドに足を運び、皆さんの活動を見に行きたいと思っています。

 

指宿 力