KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

創立99周年に思う

2022年10月17日

10月18日は啓明学院の創立記念日です。

この10月18日とは終戦後まもなく学院が財団法人化された時、その認可が下りた日で、それを記念して創立記念日と制定されました。(現在は当然学校法人です)

戦時中、神戸もたびたび空襲被害を受け、混乱のただ中にありましたが、啓明も生徒募集を禁じられるなど、存続の大きな危機にさらされていました。そのような中、当時の院長だった窪田学蔵先生が次の院長となる飛田昌久先生に協力を要請し、多大なる御尽力の末、終戦という新たに歩み出そうとする時代の流れに合わせ、財団法人として学院の運営を立て直され、その後に続く歴史の大きな一歩を踏み出されたのです。

 

今年の創立記念礼拝は記念日に先立って10月14日に本校体育館で行われました。奨励者としてお迎えしたのは昨年、関西学院第18代院長に就任された中道基夫先生です。中道先生は神学部教授でもあるので、これまでも本校の礼拝にお招きする機会もありましたが、妹さんが本校出身とのことで、いつも啓明を身近に覚えてくださっている先生です。

記念礼拝ではそのような先生から全校生徒にむけてメッセージをいただきました。この日、中道先生はフリップを用いた二通りの自己紹介をされたのですが、片方はご自身の失敗や上手くいかなかったことばかりの自己紹介、もう片方は成功や上手くいったことをもとにした自己紹介となっていました。

自信がないときや何かにつまずいた時などは、ともすると自分のネガティブな一面ばかりを見てしまうかもしれません。そうすると何かにつけて否定的になってしまい、毎日の生活すら味気ないものになりがちです。しかし私たちの人生はそのようなことばかりが続くのでなく、たとえ小さな事であっても嬉しいこと、楽しいことがきっとあることでしょう。災禍はあざなえる縄のごとし、と史記にもありますが、幸不幸と思うこともそうです。

中道先生はご自身の失敗や上手くいかなかったことも包み隠さずお話しになりながら、啓明の生徒たちにとても大切な気づきと励ましを送ってくださるもので、終始うなずきながら聴かせていただいていました。

 

啓明生がこのように礼拝で素晴らしいお話しを聴かせていただくことによって、心の深いところにいる自分を俯瞰して見ようとする、理性的な自分作りのきっかけを与えられたり、自分自身の歩みは一面的なものではなく、いろんな人たちとの関わりの中に作られていくものであることの気づきが生まれたりするものであることを改めて思う、一時となりました。そして自己肯定感を高く持つ、前向きに自らの人生を創り出そうとする啓明生の気質は、こうして礼拝を毎日行うことによって育まれていくのだなと実感するものでもありました。

 

学院の歴史においても戦火に苦しめられた時期のみならず、創立者J.W.ランバス先生が中国での医療伝道を終え、日本に来られてから学校や教会を作られていく日々の中にも、それ以降のさまざまな出来事の中にも、良いこともあれば、思い通りに行かない、難局もあったことと思います。

しかしその歴史を担ってこられた方々が、諦めず、粘り強く難題に取り組まれたからこそ、今の啓明があることに改めて深く感謝の思いを持つものです。

 

その中心にあったことは「祈り」であったことは自明です。ランバス先生や初代院長C.G.ハランド先生の時代から今に至るまで、学校の経営、運営に当たってこられた方々のほとんどすべてが熱心なクリスチャンであり、学内外で伝道やキリスト教教育の責任を担っておられた方々でした。その方々の信仰に基づいた祈りが、その時々の啓明の歩みの大きな力であり、原動力であったのでしょう。

 

創立99年の記念の日を前に、今ひとたび、そのことに心を留め、我々もまた、常に祈りを持って歩む群れでありたいと思っています。祈ると言うことは神様への感謝を献げるものであるのと共に、神様の御心を聴こうとする態度であり、自らの考えや行動が神様の前にも正しいものであろうとする決意を心に刻むことでもあります。

 

先だって歩まれた方々の祈りや願いに相応しく、今の時代を歩むことが出来るよう、教職員一同で祈りを合わせ、その責任を担っていきたいと、明日の創立記念日を前に思いを強めています。その祈りは、何より在籍している生徒たちが啓明学院の大切な一人として相応しく学び、成長していくための願いであり、祈りであることを皆で共有したいと願いますし、その上で100年周年に向けた新しい歩みを始めることが出来ればと考えています。

そして創立99年の記念の時にこうして啓明に繋がっているお一人お一人とも共に、そのような思いを分かち合い、歩みを揃えていただくことが出来れば何よりの幸いです。

 

指宿 力