中学入学式のメッセージ

 

新入生の皆さん、啓明学院中学校へのご入学、本当におめでとうございます。

いよいよ待ちに待った啓明学院での中学校生活が始まります。お天気にも恵まれ、校内の桜も、皆さんの入学をお祝いするかのように咲き誇っています。晴れがましい面持ちの皆さんに、こうして会うことができて、嬉しく思っています。

皆さんも小学校では、この3年間、コロナに翻弄された生活だったと思います。これからもお互いの配慮は必要ですが、皆さんの学校生活が豊かになるように、この啓明を舞台に、さまざまなことに思いっきり取り組んでください。これから、その制服で、この校舎で、今ここにいる同級生や先輩達、そして先生達と共に、充実した毎日を過ごしていきましょう。どうぞよろしくお願いします。

 

保護者の皆さま、お子様のご入学おめでとうございます。

数ある選択肢の中から、大切なお子様の学び場として啓明学院を選びんでいただいた期待を、教職員一同、襟を正して受け止め、今日より、その成長の日々を共に歩んで参りたいと思います。予想もしていないことが起こりえるこの世界ですが、一人一人の生徒が、神様と人に愛される人間となれるよう、そして自立した人間として与えられた多くの才能と力を活かせるよう、ご家庭と連帯しながら、私たちも心尽くし、思いを尽くして共に歩んで参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、新入生の皆さん、実は、私はけっこう新しいものが好きなのです。スマートフォンが登場するちょっと前には、パームという手のひらサイズのスマホみたいな物を使っていました。結局、私以外の先生は誰も使っていなかったのですが、新しい技術が生まれると取りあえず試してみたくなるのです。

去年の11月に公開されたチャットGPTもさっそく試しています。チャットGPTとは、コンピューターを使って、こちらが質問した問いを入力すると、まるで人間のように自然な対話形式でAIが答えるサービスで、今は無料で使うことができます。

 

たとえば、「大谷翔平選手が言いそうなことを教えて」と聞くと、「野球は楽しいスポーツです。試合で勝つことも大切ですが、楽しむことも忘れずにプレーしたいです」などと答えてくれます。また、「キャベツが冷蔵庫にあるけれど、それを使って晩ご飯は何を作ったらいいかな」と聞くと、豚肉と一緒に醤油やみりんなどで味付けをした炒め物など、いくつかのメニューを勧めてくれました。

 

さらに「美味しく作るこつは何か」と聞くと、五つほどのポイントを丁寧に教えてくれるのです。こうして対話をするようにいろいろな情報やアイデアを出してくれることもチャットGPTの凄いところです。しかも速いのです。面白いので、これを使って、「啓明学院中学校　入学式　校長式辞」と入力してみたところ、すぐにこんな文章を答えてくれました。

 

 

尊敬なる皆様、

この度、啓明学院中学校の入学式において、新入生の皆様をはじめ、保護者の皆様、教職員の皆様にお集まりいただき、心より感謝申し上げます。

啓明学院中学校は、教育理念として「自主性と協調性のある、自律的な人間形成」を掲げ、教育の場として、多様な価値観や文化を尊重し、生徒一人ひとりが自己実現できるような教育を目指しています。

新入生の皆様には、この学校の理念に共感し、自らの可能性を追求し、高い目標を持って学ぶことを期待しています。そして、そのためには、自主的に行動し、努力し、周囲と協力し合うことが必要です。

保護者の皆様には、教育において最も重要なパートナーであることを認識いただき、ご家庭でも学校でも、お子様の成長を共に見守り、サポートしていただきたいと思います。

 

 

こんな感じです。

全文を読むと長くなるのでここで止めておきますが、なかなか立派な文章で、そのでき映えに感心しています。これで、私ももうお話の準備はしなくてよくなりますね。本当にこのテクノロジーは、すごい発明だと思います。これからこれを活用してできることもたくさんありそうです。すでにGPT-４という、さらに進化したヴァージョンも、有料ですが発表されています。

 

これまでAIは学習することなどに力を発揮していましたが、これからは上手にいろいろなものを作ることができるようになっていきます。すでにこうして文章を作ること、画像を作ること、音楽やゲームを作ることもできるようになっていますが、こういったテクノロジーはますます進化し、新しい扉を開く大きな進歩となることでしょう。啓明学院ではICTの利用も盛んに行われますので、皆さんも時代にふさわしい力をしっかりと養ってください。

 

「自分の力で調べて、自分の力でまとめて文章を書きなさい」という課題が出たとき、もしかしたらこのChat GPTを使って、自分でやるべき宿題や課題を済ませる人が出てくるかもしれません。でもそれはどうでしょうか。

 

もちろん、そんなことをしていれば、中学時代に身につけるべき本当の力を養うことはできません。その時はあっという間に終わってしまって、楽ちんかもしれませんが、今の自分にとって楽な方法を選んでばかりでは、将来の自分がどうなってしまうかは簡単に想像できますね。それを望んでいるならば、どうぞご自由に、ということになるかもしれません。しかし、皆さん自身が啓明学院でしたいことも、保護者の方々が皆さんに期待することも、けっしてそういったことではないでしょう。

 

皆さんが啓明に来たかった理由は何でしょうか。

皆さんは入学試験の時の面接で、志望理由をきちんと答えてくれていました。また提出していただいた志願理由書には、保護者の方々が真剣に啓明学院について考え、こんな理由で啓明学院の教育を受けさせたいという願いをしっかりと書いてくださっていました。どうか中学入学のこの時、皆さん自身も、この啓明に来たかった本当の理由をしっかりと心に刻んでください。きっとそれは、皆さん自身が立ち返る大切なポイントとなるからです。今のその思いに正直にあってほしいと願いますし、そしてご家庭の方々の思いもけっして裏切ることのない中学生活を目指してほしいと願います。

 

伝説の国語教師と言われている、大村はま、という中学校の先生をされていた方がいます。その先生は著書の中で、中学は大人になるための訓練をするところ、と記されていました。非常に共感し、私はよくこの話をするのですが、人生の中で中学生の時代は非常に重要で、この時期に頭と心と体をしっかりと鍛えることは、その後の人生に大きく影響することだと考えています。

ですから、私は入学式では、しっかりと中学生活に臨むために、新入生に向かって啓明で学んでほしい三つのポイントを意識するようにお話ししています。

まず一つ目、「一生懸命に取り組むこと」です。

中途半端では得られない喜びや達成感を、一生懸命に取り組むことは与えてくれます。一人一人が持っている力や能力は、皆、違いますが、一生懸命に取り組むことは、皆、同じようにできるのではないでしょうか。聖書には、神様はそこを見ておられ、与えられた力が少なくても、一生懸命用いようとする人を、神様はますます豊かにされる、ということが記されています。だから、皆さんは自分には無理だ、と思うようなことに出会ったとしても簡単には諦めないでほしい。そして、たとえ失敗があっても、へこたれず、何度でも粘り強く取り組むことを大事にしてほしいと願います。

 

二つ目は、「仲間と一緒に作り上げることを大切にする」です。啓明学院は多くの人と力を合わせて目標を達成しようとする機会が非常に多い学校です。その経験は生涯の力となるからです。もちろん一人でしなければならないこともたくさんあります。しかし、皆で協力する体験は、自分の力を発揮する時でもありますし、自分の足りない部分に気づく時でもあります。実はそれが成長の瞬間。その時を逃さないよう、授業で、行事で、キャンプで、仲間との時間を大切にしてください。

 

三つ目は「自分と同じように他の人も大切にすること」です。皆さんには自分自身を大切にする人であってほしいと願っています。そのためにも、自分が好きになる自分であろうとしてください。その上で、自分と同じように他の人のことも大切にする啓明生であってほしいと願います。時には自分のしたいことを我慢して他の人に譲らなくてはならないこともあるでしょうが、自分の事だけでなく、他の人のことを大切に考えることができるということは理性があるということです。良い世界を作るためにはこの理性は欠かせません。人間が人間である理由ともなる、理性を持つ人として、皆さんには成長してもらいたいと願っています。

 

この三つのポイントを心に留めた学校生活は、きっと皆さんを賢く、強く、たくましい人間にすることでしょう。それは中学校に入った、というだけでない、心身共に本物の啓明学院中学校の生徒となる大切なポイントです。

 

そして、それは他の誰でもない自分自身をつくり上げるものとなるのです。それはAIにとって代わられることのない、自分自身です。AIに頼り切ってしまうばかりでは、そのうちに当てにされない、交換可能な存在になってしまうのは目に見えています。そうではなく、皆さんには、君でなければ、あなたでなければ、という存在であってほしいのです。

 

AIや他人任せにすることでは得られない、自分づくりは簡単なことではないでしょう。でも、その先にあるものこそが、皆さん自身のなりたい姿なのではないでしょうか。この啓明での日々で、皆さんが、どんな自分自身を作り上げることが出来るのか、楽しみにしています。

 

啓明学院のスクールモットーは「手と心は神様と人に仕えるために鍛えられる」というものです。啓明学院は神様と他の人に奉仕する人間になるために手と心を鍛える学校だよ、ということです。ここに啓明の教育の目的があります。だから、みなさんには、この啓明でしっかりと自分自身を鍛え、よりよい世界を作り出す一人となってほしい、と願っています。それがこのスクールモットーに込められた願いであり、皆さん一人一人に神様が期待してくださっているミッション、これは使命とか任務とかを意味する言葉ですが、皆さんに託されたミッションなのです。そのミッションを果たす人になるためにも、チャレンジの機会に満ちたこの啓明学院で、皆さん一人一人が自分に与えられた力と心と体とをしっかりと鍛え、好奇心をいっぱい持って、チャレンジ精神を溢れる前向きな中学生活を送ってほしいと願っています。もし、弱い自分が出てきたり、迷ったり、悩んだときは、いつでも今の自分の思いを思い出して再スタートを切ってください。

 

さあ、いよいよ中学生活が始まります。

共に集うこの仲間達と、啓明学院中学校の生徒として、その一歩を踏み出しましょう。そして、どこに行っても同じだった、ではなく、啓明でなければならなかった、という啓明学院の学校生活を過ごしてほしいと願います。そんな皆さんの歩みが私たちの、そして世界の希望となるのです。その歩みをこれから共にできることを心より楽しみにしています。共に頑張りましょう。

 

以上をもって式辞といたします。

 

 

指宿　力