KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

次の100年への第一歩

2024年4月3日

高校入学式の式辞

 

新入生の皆さん、皆さんの入学する2024年度は、とても重要な年に当たります。

昨年、啓明学院は創立100周年を迎えましたので、次の100年に向けた新しい歩みの第一歩を踏み出す年でもあります。そして、高校のカリキュラムが新しくなって3年目、中学、高校とすべての授業内容が大きく変化した学びの完成年度にあたります。

 

啓明学院は新学習指導要領による新カリキュラムを始めるにあたり、理数系に力を入れたリベラルアーツ型の学びを行う学校となりました。リベラルアーツというのは、本当の意味で人を自由にするための学びですが、こうあるべき、という思い込みから自分を解き放つ、幅広く、深い学びとも言えます。リベラルアーツが、もともとはギリシア時代からの自由七科から生まれていることは、学校案内に書いてあるとおりです。

それを21世紀に生きる皆さんにさらに相応しいものとしていくために、新しいカリキュラムを整えたものが、皆さんの受ける授業の基になっています。啓明が目指す新しい学びへの大きな期待を受けていることを、ぜひ一人一人心に留め、よき学び手として、頑張ってくれることを願っています。

 

 

もう一つは、中学から入学した生徒と高校から入学した生徒が高校1年生から同じクラスで学ぶクラス編成にしました。これまではカリキュラムが異なる部分もあり、高校1年生だけ別クラスにしていましたが、授業を調整し、今年からミックス型のクラスになります。すでに先日の招集日の時に、皆さんはグループになって校内見学をしていました。少し仲良くなっている様子が見られたので、このまま順調にスタートしていければと願っています。

入学してしまえば、もう皆さんは同じ啓明生です。よく外部生、内部生という表現を使う学校があるようですが、啓明ではそのような言葉は使っていません。もちろん、中学から入ってきた人と高校からの人を分けて表現しなければならない時もあるので、そういった場合に私たちは、中学からの人を中学入学生ということで中入生、高校から入ってきた人を高入生と呼んでいます。皆さんも必要な場合にはぜひ参考にしてください。

 

さて、先日、数理科学研究会の眞部さんと高橋さんの二人が、国立情報学研究所で発表を行ったと学院ホームページで紹介されていました。先週、彼らは広島大学での学会発表も研究者相手に行っています。高校ながら研究業績を認めていただき、本当に凄いな、と思います。

だからといって、啓明の数理科学研究会は驚異的に成績がいい人しか入れないのかといえば、まったくそんなことはありません。むしろゲーム好きや数学好きの集まる、中1から高3までがアイデアを出し合う、なかなか面白い集まりです。

 

 

 

 

 

先日、指導を担当してくださっている宮寺先生が、日本電産の創業者、永守重信さんのお話を紹介してくださいました。それは、出身校の偏差値などよりも、どれだけ粘り強く続けているかが大事だということでした。日本電産はモーターを作っている会社ですが、昨年、ニデックと社名を変えました。最近はテレビCMでよく見ますね。女優の川口春奈さんを起用したCMを見たことのある人は多いと思います。

永守さんのインタビューや著書を読んでみると、一流の大学を出る社員も、そうでない人も、大して仕事の成果は変わらない、学歴や偏差値よりも、創意工夫や状況の変化に応じて自ら判断して動けることが大切である、と何度もおっしゃっています。何より大切なのは、あきらめずにやり抜こうとする粘り強さだ、と話されているのです。

こうした永守さんの言葉を引いて、宮寺先生は、研究の世界ではけっして学校の成績がいい、ということなんて当てにならないのだ、と言っておられるのです。それよりも柔軟な発想で、どうしたらよいのか、頭をフル回転させ、粘り強く、あきらめずに課題に取り組むことが大切で、そういった姿勢が数理科学研究会の成果に繋がっているのだと思います。これは私たち啓明学院が大切にしたいことなのです。

 

私は2020年度に校長に就任して以来、年度ごとに教育方針を示しているのですが、先生達には啓明学院において生徒たちに獲得させたい7つの項目を明示しています。実はその筆頭に挙げているのが、このことです。それは「やり抜く力」です。あきらめずに課題に立ち向かう力は、啓明の生徒たちが日々の学びや経験の中で、必ず会得してほしい力なのです。

一度や二度の失敗や挫折などにくじけず、夢を持ち、志を高く、なりたい自分、目指したい世界作りに前向きに取り組もうとする、そんな生徒たちを育てたいと思います。啓明にはそんな思いを持った生徒を応援する校風があります。それが、私たちが大切にしている「チャレンジ精神」を育む土壌です。

 

関西学院大学の先生がよく啓明の生徒たちを評して、「啓明の出身者は自己肯定感が高い」と仰います。それは啓明に満ちているチャレンジへの気風が生徒たちに浸透しているからでしょう。もし、お前にはそんなことは無理だ、お前なんかが出来るわけない、と他の人がチャレンジを躊躇してしまうようなことを言うような人がいれば、そんな風土は一気になくなってしまいます。しかし、あの子も頑張っているのだから私もやってみよう、と互いに刺激し合う今の校風があるので、どの生徒も安心してチャレンジできるのです。

もちろん、チャレンジには失敗がつきものです。チャレンジとはこれまでの自分を超えようとする高いハードルのようなものであるからです。しかし自分には無理かもしれない、と思うようなことを乗り越えるからこそ、成長する自分を感じ、自信が生まれるのです。このようなことを何度も経験する学校だからこそ、啓明生の自己肯定感は高いね、と言っていただけるような評価に繋がっているのでしょう。

 

真剣にやっても失敗は付きものである、と皆がわかっているからこそ、安心して失敗もできるのです。失敗を断罪するのではなく、次に活かせるように学校が応援するからこそ、啓明生はチャレンジに前向きでいられるのです。皆さんのこれから始まる啓明学院高等学校での日々も、そうであってほしいと願います。

他の人のチャレンジを応援し、自分に対する自信のなさや、時に感じる劣等感をも手なずけて、さあ行くぞ、と一歩前に踏み出し、臆せずチャレンジしましょう。チャレンジしようとする自分作り、学校作りに励んでほしいと願います。

 

聖書は私たちに語ります。求め続けよ、探し続けよ、門を叩き続けよ。

 

何度でも、自分自身と対話し、本当の自分は何を求めているのか、いったい何を探しているのか、なぜその門を叩くのか、考えてみてほしいのです。そこにきっと本当の自分が何を望んでいるのか、ということの答えがあることでしょう。是非、この啓明学院で本当の自分と出会い、本当の自分が何を願っている人間なのかを知ってほしい。そして本当の自分が求めていることを求め、探していることを探し、その門を叩き続けていく自分作りに励んでほしいのです。

その歩みは一筋縄ではいかないことばかりかもしれませんが、それでも粘り強く取り組んでください。上手くいかないことがあっても、へこたれずに何度でも挑戦してください。そうやって得られる力が、誰にも代わることのできない皆さん自身でもあります。その力を得ることこそ、皆さん自身が啓明に来た意味となることでしょう。

きっとその歩みの中に、皆さん自身が隣にいる人や家族や社会を温かい心で包む、そしてこの世に必要とされ、神様に愛される、あるべき啓明生の姿が見えてくることでしょう。そして、その学びの先にこそ、啓明でよかった、啓明でなければならなかった、と心からそう思える日があるはずです。その日を楽しみにし、いよいよ始まる高校生活を充実したものとしていきましょう!皆さんのこれからを心より楽しみにしています。

 

指宿 力