KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

1学期終業式のメッセージ

2024年7月19日

先日、神戸市中学総体決勝戦が王子スタジアムで行われました。サッカー部が優勝を果たしました。私も幾人かの先生方と共に会場で応援しました。以前負けた相手チームに粘り強く挑み、2-0で勝利して優勝したことは、本当に立派だと思いました。決勝点を挙げた平井優貴さんは、自分より大きな相手選手にひるむことなくチャレンジし続け、ゴール前で技ありのシュートを放っていました。

それは素晴らしいプレーでした。その1点を産むためには、日々の地道な練習、周到なミーティングなど日常のチームとしての真剣な取り組みがあったからのことでしょう。おめでとう。

 

 

こうした華やかな結果だけでなく、多くのクラブにとって大切なことは、目標以上に目的であるということでしょう。目標というのは、県大会・インターハイ出場とか、日本一というものです。一方、目的とは、部活動を通してどのような人間になるか、ということです。そしてさらに私たち啓明学院では啓明生として、どんな人間になるか、ということが最も大きな目的でなければなりません。だからこそ、そこで得たことは、きっと自分自身の土台となることでしょう。そういう意味で、部活動というのは学校生活の中でも大切なものだと思います。

この6月、長い歴史を持つ体操競技部が、その歩みに終止符を打ちました。指導をされていた先生がいらっしゃらなくなってから久しく専門の方がおらず、矢吹先生たちがその後を継いでくださっていましたが、今年で活動を終えることとなりました。残念な思いは尽きませんが、これまで頑張ってきた部員の皆さんや卒業生の皆さんの誇るべき場所として、いつまでも憶えていたいと思います。本当にお疲れ様でした。

そのようなことも含め、この1学期、それぞれの部活動の歩みが所属する一人一人にとって価値あるものであり、人生の糧となっていることを憶えます。目指す目標に届かず、悔しい思いをした人もいるでしょうし、思いがけない怪我で辛い思いをした人もいます。その経験すらも必ず意味あるものとして、皆さんを成長させるかけがえのない宝となることを信じます。どうぞ前向きな人生の糧としてくれることを心より願っています。

 

今後の試合や大会に向けて、頑張る皆さんを応援しています。啓明には学校の部活動ではない場所で頑張っている人がたくさんいます。高校2年生の作田さんは、昨年に引き続き、全国高校生クイズ選手権に啓明学院生として出場しました。今年は高校1年生の向井さん、田村さんとチームを組み、大会に臨みました。昨日、出場の報告に来てくれたのですが、残念ながら予選敗退だったとのことです。目標達成はまだのようですが、そのような歩みも啓明にとっても大きな一歩だと思っています。仲間が増えたらいいね、と話したのですが、関心のある人は作田さんに声をかけてくれたら喜んでくれると思います。

中学3年生の前田さんはスケート競技に取り組んでいますが、この夏、ショートトラックの日本代表に選出され、インドネシアで行われる国際大会に派遣されます。頑張ってきてください。

 

来週から始まるパリオリンピックに本校卒業生が出場することになりました。今回、ラグビー男子セブンス、7人制ラグビーチームに選出された古賀由教(こがよしゆき)さんは、中学入学前から続けていたラグビーに熱心に取り組み、卒業後に進学した東福岡高校、そして早稲田大学で、ともに日本一となった方です。

私が知っている限り、オリンピックに出場した啓明生は2000年に行われたシドニーオリンピックにおいて新体操団体メンバーに選ばれた中田真美(なかたまさみ)さん以来です。姉妹で啓明に通っていた中田さんは、その後、東京女子体育大学に進学し、大学在学中にオリンピックメンバーに選出されました。

パリオリンピックに出場する古賀さんには、昨年、ちょうど怪我のため代表合宿から日本に帰っていたタイミングで学校に来てもらい、中学1年生に向けてお話しをしてもらいました。その時に古賀さんから寄贈していただいた日本代表ジャージとともに、在校生の皆さんへのメッセージを校長室前の掲示板に掲載していますので、観にきてください。男子セブンスの試合は、今回のオリンピックで最初に予定されていて、初戦は7月25日、いきなり世界ランキング1位のニュージーランドとの戦いとなります。非常にスピード感溢れる競技ですので、ぜひ興味を持ってみてください。皆で応援しましょう。

 

さて、今日、終業式を迎え、高校1年Fクラスで共に学んだ留学生マーリーンさんにとっては、最後の登校日になっています。スイスから日本に来て、戸惑うことも多かったとは思います。マーリーンさん自身の日本語が上達したというようなことだけでなく、共に学ぶという素晴らしい経験を私たちに与えてくれました。本当にありがとう。これからも啓明を母校と思ってくださいね。

そして皆さん、振り返ってみて、この1学期はどのような学期だったでしょうか。

すべてが順風満帆とはならない人の方が多いとは思います。しかし、一人一人にとって、この学期の歩みが自分の糧になっていることを実感するものであってほしいと願っています。悔いが残るものがあるのならば、その悔しさを忘れないでいてほしいと願います。それが次へと進む力の原動力となるからです。

啓明生である皆さんには、振り返って何も感じないような凡庸な人間ではなく、悔しさや痛みを感じる、自分の欠けた部分にも目を向ける、そんな人であってほしいと願います。

皆さんは日々の礼拝などを通して、たくさんのメッセージを聴きましたね。どうか、そこから一つでも、一言でも自分の心に留めるものを見つけていてくれたらと願っています。聖書の語る人間観こそが、私たち啓明学院の教育の土台です。自分がいかに生きるか、ということを考えてほしいのです。

 

この後、今年初めての「サマリア人賞」を中学1年生8名に渡します。この8名の生徒たちは先日、学校近くで、大きな荷物を持って大変そうにしているおばあさんに声をかけ、荷物を持ってあげたり、バス停にまで連れて行ったりしたそうです。その親切で優しい心遣いに感激した、その方からお礼の電話をいただいたので、私がそのことを知るに至りました。

もちろん、困っている方に出会ったとき、親切なことをしたという人は、この中にもいるとは思います。たまたま私が知ったことしか表彰できないので申し訳ないですが、建学の精神を生きる啓明学院生が、すること、話すことはもちろん、しないことまでも世間の人は見ています。

それ以上に、神様が皆さん一人一人をつぶさに憶え、見守ってくださっています。

皆さんには、神様が自分にどのような期待をしてくださっているかを考え、神様に喜ばれる人間として自分の人生をよいものしようとする歩みをなしてほしいと願っています。それが今日読まれた聖句の本質的なメッセージとも言えるでしょう。心に刻みたい言葉です。そして「サマリア人賞」の表彰を通しても、中学1年生を讃えるとともに、皆さん自身の振る舞いについても考える機会としてくれればと願っています。

 

さあ、いよいよ明日から長い夏休みが始まります。自分自身の計画を立てている人、サマープロジェクトを楽しみにしている人、クラブ活動を頑張ろうとしている人、校外のイベントに参加しようとしている人もいるでしょう。啓明の海外プログラムで、イギリスに行く高校生や韓国に行く中学生もいますね。中学2年生は青島キャンプもあるし、中学3年生以上では海洋冒険キャンプに参加する人もいるでしょう。いずれにしても、せっかくの長期休暇ですから、2024年の夏、自分は何をしたかをしっかり自分の歴史に刻む皆さんであってほしいと願います。また長期休みということで、自由な時間の増える時期でもあります。だからといって、年齢で規制されているルールを破ることのないようにしてください。

特に法律で18歳や20歳以下には許されないことは、皆さん自身の安全を守る意味でも大切です。18禁の、体調を壊すような辛いポテトチップスもあるようですが、年齢制限のある、食べてはいけない物、飲んではいけない物、吸ってはいけない物があります。場の雰囲気に流されることなく、安全に、健康にこの夏を謳歌してください。そして何より皆さん一人一人が啓明生であること誇りを堅く持って、過ごす夏としてください。

それはこれをしてはいけない、あれをしてはいけない、という消極的なことではなく、日々の経験、体験を学びにし、チャレンジの機会を逃すことなく前向きな姿勢で夏休みを過ごす、ということです。啓明生である自分を大切に、与えられた多くの賜物を活かす夏としてください。

 

8月には、第2次世界大戦終戦の日を迎えるので、被爆の経験や戦争のことを考える機会も多くあります。これから、皆さんと同年代の高校生の詩を一緒に聴きたいと思います。この詩は、先月行われた沖縄全戦没者追悼式において朗読されました。

 

宮古高校3年生の仲間友祐さんという方が読んだ「これから」という詩です。

日本で唯一地上戦が行われた沖縄からのメッセージです。沖縄が今もなお、戦争の強い影響下にあることを私たちは忘れてはなりません。また、現在もウクライナやパレスチナなどで起こっている悲劇に敏感でありたいと願っています。朗読してくれるのは、高校3年生、放送部の石井さんです。ではよろしくお願いいたします。

 

〈朗読〉

 

「これから」

短い命を知ってか知らずか

蝉が懸命に鳴いている

冬を知らない叫びの中で

僕はまた天を仰いだ

 

あの日から七十九年の月日が

流れたという

今年十八になった僕の

祖父母も戦後生まれだ

それだけの時が

流れたというのに

 

あの日

短い命を知るはずもなく

少年少女たちは

誰かが始めた争いで

大きな未来とともに散って逝った

大切な人は突然

誰かが始めた争いで

夏の初めにいなくなった

泣く我が子を殺すしかなかった

一家で死ぬしかなかった

誰かが始めた争いで

常緑の島は色を失くした

誰のための誰の戦争なのだろう

会いたい、帰りたい

話したい、笑いたい

そういくら繰り返そうと

誰かが始めた争いが

そのすべてを奪い去る

 

心に落ちた

暗い暗い闇はあの戦争の副作用だ

微かな光さえも届かぬような

絶望すらもないような

怒りも嘆きも

失くしてしまいそうな

深い深い奥底で

懸命に生きてくれた人々が

今日を創った

今日を繋ぎ留めた

両親の命も

僕の命も

友の命も

大切な君の命も

すべて

 

心に落ちた

あの戦争の副作用は

人々の口を固く閉ざした

まるで

戦争が悪いことだと

言ってはいけないのだと

口止めするように

思い出したくもないほどの

あの惨劇がそうさせた

 

僕は再び天を仰いだ

抜けるような青空を

飛行機が横切る

僕にとってあれは

恐れおののくものではない

僕らは雨のように打ちつける

爆弾の怖さも

戦争の「せ」の字も知らない

けれど、常緑の平和を知っている

あの日も

海は青く

同じように太陽が照りつけていた

そういう普遍の中にただ

平和が欠けることの怖さを

僕たちは知っている

 

人は過ちを繰り返すから

時は無情にも流れていくから

今日まで人々は

恒久の平和を祈り続けた

小さな島で起きた

あまりに大きすぎる悲しみを

手を繋ぐように

受け継いできた

 

それでも世界はまだ繰り返してる

七十九年の祈りでさえも

まだ足りないというのなら

それでも変わらないというのなら

もっともっとこれからも

僕らが祈りを繋ぎ続けよう

限りない平和のために

僕ら自身のために

紡ぐ平和が

いつか世界のためになる

そう信じて

 

今年もこの六月二十三日を

平和のために生きている

その素晴らしさを噛みしめながら

 

 

石井さん、ありがとう。石井さんはこの夏、東京で行われるNHK杯全国高校放送コンテストに兵庫県代表として出場します。頑張ってください。

そして今日の詩にあった平和を共に祈り、真の平和の実現を願う思いを、心に堅く据える私たちでありましょう。

それでは9月の2学期始業式、再び皆さんの活き活きとした笑顔に会えることを心より祈っています。よい夏を過ごしてください。

 

指宿 力