校長コラム

スポーツの秋

2020年11月10日

今年度の春シーズンは全てのクラブの大会が中止となり、非常に残念な思いでしたが、6月以降段階的にクラブ活動も再開し、本校の運動部でも様々な規制の中ですが、少しずつ練習試合や公式戦が行われるようになりました。いち早くシーズンをスタートした競技もありますが、その分、厳しい規制のまま続いているよう思います。

クラブ活動は生徒たちの学校生活の大きな柱となりますが、当然、生徒自身が一人だけの力で取り組めるものではなく、道具などの準備のための経済的な負担や栄養を考えた日々の食事、体のケア、心のケアはもちろん、早起きのための協力など、全てに渡ってご家族が一丸となって支えてくださって、ようやくやれるものではないでしょうか。そんな大変な思いをしながらも、我が子が目標に向かって頑張っている姿は頼もしく感じるものですし、所属するチームの試合観戦を我が子の出場の如何に関わらず楽しみにしてくださっている方も多くおられることと思います。そして保護者や後援会の方々の団結した応援は何よりも生徒たちの大きな、大きな力となるものです。

今年、そういった応援が大幅に制限された競技があったことは大変胸の痛いことです。子供たちも色々と我慢しているのだから親としてもそれに倣うしかないにしても、忸怩たる思いを募らせておられた方もおられるのではないかと思います。

先日の土曜日、王子スタジアムにおいて、限られた部員保護者、教員のみ観戦可能となった高校アメリカンフットボール部の兵庫県大会決勝戦を観戦した後、学校に戻り、高校男子サッカー部の高校3年生最後のゲームを観戦しました。

サッカーは早めにシーズンが再開した分、男女とも厳しいガイドラインが制定されました。そのため公式戦最後の試合も保護者の観戦はおろか控え選手が試合に帯同できないこともあったようです。そこで練習試合の一つとして高校3年生の花道を飾る試合が準備されました。通常、練習試合は公式戦に備える調整の意味が強いものですが、何のタイトルもかかっていないお別れ試合などの場合、往々にして親善ムードが漂い、楽しいゲームとなることが多いように思います。

しかし保護者の方々や下級生の部員たちとスタンドで見たこの試合の高3部員たちのプレーは非常にレベルが高く、見応えのあるものでした。これまで途方もない時間をかけて練習してきたであろうことが分かるセットプレーなども随所に見られ、大きく心を揺さぶられる一戦でした。そして相手チームもそれに呼応し、最後まで気の抜けない試合となりましたし、ようやく間近で観戦していただいた保護者の皆さんも胸を熱くされたのではないかと思います。

試合後、生徒たちが挨拶に来てくれましたが、真っ先に私を見つけ、一目散に来てくれたのはゲームに出ていなかった二人の高3生でした。どちらも大変充実感に満ちた表情で「6年間ありがとうございました」と力強く言ってくれました。その後、彼らに倣って続々と選手からマネージャーまで皆が観戦の礼を伝えに来てくれたのですが、二人の様子にサッカー部の顧問の先生が何を大切にしてチーム作りをしてこられたかを垣間見る思いでした。

もちろん、チームの「目標」は勝つことでしょう。そのために日々のハードワークがあるのです。しかし啓明学院の運動部の「目的」はこのチームにいてどのような人間になるか、ということに尽きるのです。ともすると光を浴びる側ばかりが目立ちますし、誰でもそこに立ちたがるものです。しかしそこに立てない悔しい思いや我慢の経験は往々にして人格的な成長を与えてくれますし、そのことを知っているチームはお互いを尊重し合う、暖かい雰囲気を持っているものです。その中で部員たちは仲間作りの本質を会得し、人生において大切なことを感覚的に深く胸に刻み込んでいくことでしょう。日が暮れて少し肌寒さを感じる夜でしたが、サッカー部の面々のそのような姿に触れ、すっかり心は暖かくなりました。

もちろん高校男子サッカーだけでなく、それぞれの部活でも願っていたような最終学年を送ることが出来なかった3年生のために心を砕き、花道を用意されているようです。きっとそれらの経験もまた生徒たちの胸に深く息づいていくことでしょう。

スポーツの秋、これから大一番を迎える部活もありますし、新チームで動き始めた部活もあります。様々な運動部がこの時期特有の制限の中ではありますが、それぞれに与えられた賜物を十分に活かし、悔いのない取り組みをしてくれたらと願っています。そして、その歩みの中にも一人一人に神様の祝福が豊かに注がれるよう、祈ってやみません。

 

指宿 力