KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

素直な心を大切にする学校

2021年5月29日

学校では中間考査、全国学力調査が終わり、この週末には英検が行われています。テストは記憶の定着や理解度を確認するためにも、やり方は様々ですが学校生活において欠かせないものの一つです。定期考査は結果が成績に直結することもあり、生徒たちは試験準備に頑張って取り組んだことでしょう。その成果は答案の返却で示されるのですが、先日、試験科目を受け持っている国語科の佐藤先生が、次のような文章を書いて送ってきてくれました。

 

それは中間考査の答案返却でのことでした。

「先生、採点が間違っています。」と生徒が教卓に座っている私のところへやってきました。

「ごめん。どこかな?」

「ここです。模範解答はこうなっているのに、丸がついています。」

私は一瞬、耳を疑いました。というのは、生徒は誰でも1点の重みを知っています。だから1点でも多くほしいものです。ところが、自分が減点されることをわかっていて自ら申告する、その勇気ある行動に私は感動したのです。職員室に戻ると、何人もの先生から同じような体験をしていることを聞きました。昨今の、責任ある地位にある大人たちの不誠実な言動をふりかえって、恥じ入るばかりでした。

 

「正々堂々」で思い出すのは、のロサンゼルスオリンピック(1984年)決勝戦です。山下泰裕選手(現日本オリンピック委員会会長)の相手はエジプトのラシュワン選手でした。山下選手は決勝戦を戦う前に右足に怪我をしていました。ラシュワン選手は、その右足を狙って攻撃すれば有利になるのに、正々堂々、正面から組みあって勝負したのでした。結果は、そのラシュワン選手を山下選手が破り、金メダルに輝いたのでした。試合後、スポットライトを浴びたのは、負けたラシュワン選手の方でした。正々堂々とした戦いぶりが注目されて、世界中から尊敬を集めたのでした。

「正々堂々」、私たちはこの姿勢を大切にしていきたいものです。

 

あなたがたは世の光である。山の上にある町は、隠れることができない。また、ともし火をともして升の下に置く者はいない。燭台の上に置く。そうすれば、家の中のものすべてを照らすのである。そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かしなさい。人々が、あなたがたの立派な行いを見て、あなたがたの父をあがめるようになるためである。

(新約聖書 マタイによる福音書5章14〜16節)

 

 

私自身、答案返却の際に何度もこのような事があり、常々啓明の生徒たちはなんて正直なんだ、と思っていました。佐藤先生の文章は、そんな啓明学院の生徒たちの気質を表してくれています。

ともすると損をしているように思いかねないことかもしれませんが、自分の力以上の結果を与えられることを望まず、正しく採点して欲しいと願う、そんな生徒たちの姿は神様の目にも尊く映ることでしょうし、潔い姿勢は一人の人間として尊敬できるものです。

そのような生徒気質は、おそらく啓明にお子さんを通わせてくださるご家庭の雰囲気から生まれてくるものでもあるのだろうな、と思います。何事も損得勘定で考え、利に聡く立ち回ろうとするような中からは、たとえ点数が引かれようとも、自分の考える正義を通そうとする考えは生まれてこないでしょう。

もちろん教師の側も採点の間違いはけっして看過されるものではありませんので、注意深く臨むことが大切です。そのような時にも生徒たちの成長の機会が生まれていることに救われる思いがしつつ、襟を正していきたいと願います。

その上で生徒たちの素直な心を大切にし、まっすぐな思いがけっして間違ってはいないことを共有する学校であり続けたいと願います。よい行いもそうでないことも、神様はいつも見てくださっていることでしょう。その視線を大人である私も感じながら、神様の御旨に適う道を歩みたいと心から願う思いに満たされる佐藤先生の文章でした。

 

 

指宿 力