KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

趣味

2021年6月11日

先日、参加したあるクラス礼拝で、一人の生徒が趣味について話をしてくれました。自分の趣味、趣味の効用、そして充実した人生とは、という非常によく考えた、楽しいお話しでした。話を聞きながら、私も話し手の生徒と心の中で対話しつつ、自分の趣味についても考えていました。

 

私自身の趣味はギターを弾くことやスポーツ観戦などです。ギターは中学生の頃から大好きで、友人らと集まって演奏したり、一人でつま弾いて楽しんだりしてきました。啓明学院でも文化祭の出し物として腕に覚えのある先生達と一緒に演奏したりすることがあります。聖書科の小嵜先生はとてもきれいな音でアコースティックギターを奏でますし、英会話のベネット先生のドラムの腕前はかなりのものです。時折、学校でのそんな時間も時々持ちながら今でも趣味を楽しんでいます。そんな時間は楽しいものですし、これをお読みの方々もいろいろな趣味をお持ちのことでしょう。

 

一方で、啓明でも本当に多くの保護者の方々が子供達の活動のために学校まで足を運んでくださいますが、親として子供の活動を観ることは、それはもう趣味をはるかに超えた喜びであり、楽しみなのではないではないかと感じます。学校行事の度にビデオカメラを担いでその姿を記録に残されている方や、クラブの試合や演奏会が行われる度に、とても熱心に出席してくださる方がたくさんいらっしゃいます。(啓明の保護者の応援マナーの良さはいろいろなところで聞くのですが、節度を守った熱い応援や鑑賞の姿は本当に誇らしく思うところです。)

 

ところがこのご時世、なかなかそのような機会を創ることが難しくなってしまいました。クラブの試合も無観客が基本になっていますし、そもそも行事そのものを開くこともままなりません。

そんな中、先日、実行役員の一人としてアメリカンフットボール部の試合会場に行ったときのことです。今春は無観客となったスタンドに簡易の放送席を建て、実況中継の準備をしている卒業生の平田くんと重田くんに会いました。

彼らはこの状況下、なかなか試合を観る機会がないことに心を痛め、自主的にYouTubeチャンネルを立ち上げ、許可を得て生中継を配信する活動を始めていたのでした。さらにそれは母校の試合だけでなく、自分たちが行ける範囲の関西の高校の試合すべてに手弁当で駆けつけ、会場で観ることの適わない保護者の方々や卒業生、そしてファンの方々のために今春から続けてくれているのです。

すでに大学を卒業し、それぞれに勤めを始めている中、彼らは時間をやり繰りしながら、解説も巧みに中継を続けてくれています。すでに関西大会が始まっていますが、彼らはすべての会場に行くとのことです。

 

 

そんな彼らの取り組みに、どれだけ多くの学校の保護者が喜んでいることでしょうか。テレビのように豪華な設備があるわけではなく、1台の固定カメラで試合を追いかけるだけなのですが、回を重ねるごとに上手くなる解説や分かりやすいキャプションは、観ていても安心できるものになってきたように思います。保護者の中には普段会場に行きたくてもなかなか難しい方々もいらっしゃることでしょう。そういった方々のためにも、できる範囲でやっている取り組みが、多くの人たちの喜びになっていることは、きっと彼ら自身の喜びともなっていることでしょう。

 

もしかしたら、これも彼らの「趣味」なのかもしれません。しかしそんな「趣味」は大歓迎。それが子供達の一番の応援団である保護者の方々の喜びを満たすものになっているのです。もちろんそれは競技に励む選手やスタッフにとっても大きな力となっていることでしょう。喜びの連鎖をもたらす、そんな卒業生の取り組みに頭が下がります。彼らのような取り組みはどの競技でもできることではないでしょうし、継続してやり続けるには大きなエネルギーが必要でしょう。きっと犠牲にしていることもあることでしょう。

 

彼らのその姿は、ソーシャルアントレプレナーシップを持つ人のあり方を教えてくれているように思えてなりません。問題を発見し、その解決のために自分ができることを考え、実行する。しかもそれを継続して行う。自分の蓄えてきた力をできる限り投じることで次第にその力はさらに伸びる。そしてその働きが多くの人の喜びと幸福に繋がる。本人達にとっては少し大げさな表現に感じるかもしれませんが、そのように思っています。そしてこのような取り組みを、自分の置かれた場所でコツコツやっている卒業生が実にたくさんいることは私たちの誇りです。これからも折に触れ、そのような姿を紹介していきたいと思います。啓明の学びの先にある、一人ひとりに委ねられたミッションを果たす姿は、こうして世を照らす働きとして具現化しています。

 

 

指宿 力