4月に新しい学年が始まったばかりと思っていたのに、もう夏休みです。あっという間のようにも思いますが、皆さんにとってはどんな1学期だったでしょうか。毎日の学校での経験や学びの成果は後ほど渡される、通知表にも記されているはずです。一人ひとり、しっかりとそれにも向き合い、今後の糧としていきましょう。
さて、これから始まる夏休み、サマープロジェクトや家族旅行、友達との遊びや夏祭り……楽しい予定がたくさんあるという人もいることでしょう。クラブ活動で大きな大会が控えている人もいますし、合宿に臨む人もいます。それぞれに「やろう!」と思っていることをしっかり頑張ってください。
夏休み期間は、みなさんにとって「ただの休み」ではありません。それは「どう過ごすか」「何を学ぶか」「何を感じ、何を選ぶか」を、自分の手で決めていく時間です。
是非多くのチャレンジを心がけるとともに、自分の感性を磨く夏としてほしいと願っています。
時間があれば行きたいと思っている場所に行く人と、結局なんやかんや理由をつけて行かない人では、きっとその後の人生の生き方にも大きな違いが生まれることでしょう。
足を運べば、その道中にたまたま見ることのできた景色に心を奪われたり、出会った人に影響を受けたりするものです。そうした得難い経験というものは、自分がやろうとしなければ手に入れることができないものです。
語学や資格の勉強に勤しむ、宿題を計画的にやる、観たかった映画を観る、楽器の練習に集中する、新しい料理のレパートリーを広げる。自分自身と向き合って、「2025年の夏はこれをした!」と後の自分に誇れる夏を過ごしてみましょう。
さて、今年は日本が先の大戦を終えた1945年から80年という節目の年です。広島、長崎の原爆被害や沖縄戦はもちろん大きなできごとですが、皆さんが毎日を安心して過ごしているこの神戸の町も、かつては戦争によって大きな被害を受けた街の一つです。
何度も神戸は空襲を経験しましたが、1945年の3月17日、そして6月5日、7月26日の3回の空襲は特に激しく、三宮、元町、長田など、多くの人々が暮らしていた場所が一夜にして焼け野原になったのです。
そんな神戸や明石の空襲後の記録写真を、本校の生活研究科の先生だった湯浅先生が、寄贈してくださいました。新聞記者だったお父様が撮影されたアルバムを、皆に観てもらいたいと学校に贈ってくださったのです。
建物の骨組みだけが残された街、崩れた瓦礫の山、そして煙にかすんだ空の神戸、そこには、戦争という暴力がどれほど無残に人間の命や暮らしを奪うかという現実が映っていました。それが遠くの外国ではなく、私達の身近な三宮や元町、明石駅前ということに衝撃を覚えました。
よく観てみると、あ、これは大丸だ、ここはトアロードだ、モスクがある、というようなことがわかってきます。アニメ映画の「火垂るの墓」も三宮駅から物語が始まる神戸の空襲後のお話ですが、まさにあの世界の記録写真です。
戦後、人々は懸命に神戸を復興しました。さらに戦後50年となる1995年には、阪神・淡路大震災が起きました。それから30年間、多くの人たちが築いてきた「平和の上」に、私たちは今、生きています。
世界に目を向ければ、ウクライナやパレスチナなど世界の各地で、戦争や暴力が今も続いています。「遠い外国のこと」と思うかもしれません。しかし、「平和を守る」という営みは、特別な誰かが行うことではなく、私たち一人ひとりに託された使命です。
聖書にはこうあります。
「平和をつくる人々は、さいわいである。その人たちは神の子と呼ばれる」(マタイによる福音書 5章9節)
皆さんの言葉や態度、毎日のふるまいの中にこそ、平和をつくる力があります。誰かを思いやること、争いを避けること、違う考えをもった人と話し合うこと、それらすべてが神様の愛をこの世界に表すことなのです。戦後80年を迎えるに当たり、どうか皆ともそのことを深く心に留めたいと願っています。
そして今日、読んでもらった「神の国は、あなたがたの間にある」(ルカによる福音書 17章:21節)と記す聖書の言葉を胸に刻み、今この時代に生きる私たちが、平和を願い、その実現者として、まずは自分からその歩みをなしていきましょう。
それは学校での友人との関係において、家族と過ごす家庭において、与えられているたくさんの賜物を用いようとすることが、その一歩を踏み出すということです。そこに神様の愛を実現する啓明生の姿を示していきましょう。
最後に、この月曜日に学校を訪問してくださった方のことをお話します。
昨年10月と今年5月の2回、高校生約90名が、能登復興支援ボランティアに行きました。この活動を現地で支えてくださっているバス会社、めだか交通の干場社長が、お連れ合い様とともに来校されました。能登半島の厳しい現状を聞かせていただきました。簡単に解決できるものではない、途方もなく多くの課題を抱えていることがよくわかりました。
啓明の生徒は、能登に一度ならず二度も来てくれた、それがどんなに嬉しいことか、我がこととして考えてくれている子どもたちがいる、それがどんなに力づけられるか、ということを干場さんは伝えてくださいました。
その後、参加した生徒たちや先生方と干場さんは再会し、とても良い時間を持っていただいたと思います。
自分のチャレンジが誰かの喜びになるということは、ここにいる高校生の皆も、教室で聞いてくれている中学生の皆も、同じです。
皆が、その与えられた力を用いて、優しい思いやりに満ちた心で、今をしっかりと生き、知力、体力、愛の精神を鍛えていきましょう。皆からあふれる希望の光はもっともっと眩しいものになると私は信じています。
この夏も、神の守りと平和が皆さん一人ひとりにありますよう、心より祈っています。9月の始業式に、また元気に会いましょう。
2025年7月18日
指宿 力