
現在パリ・パラリンピックが行われています。オリンピックほどのテレビ中継はありませんが、観ている我々に熱いものを感じさせてくれるのは同じかなと思います。競技自体の魅力や多様性の面白さはもちろんですが、そこにいる一人の人間がどれほど鍛錬を積み重ねてあの場所に立っているか、ということも思い描きながら見ることができれば、パラリンピックの意義深さにいっそう触れることができるではないでしょうか。7日まで行われるということなので、関心を持って観ていきたいと思います。
パラリンピックに先立ってオリンピックが行われました。終業式でもお話ししましたが、本校卒業生の古賀由教さんが、ラグビー男子セブンスで出場しました。この快挙を、まずは啓明に連なるもの皆で祝福しましょう。
競技自体は開幕式前から始まっていて、日本でのテレビ中継はなかったと聞いていますが、私は観ることができました。たまたまこの時、私は法人の仕事でインドにいて、現地では中継があったからです。インドでは、JGインターナショナルスクールという、幼稚園から大学まで持っている大きな学校に教育協力を行うプロジェクトを始めていて、その開校セレモニーがインドで行われていたのです。
古賀さんは初戦から交代メンバーで出場していましたが、惜しくもチームとしては願っていたような結果には届きませんでした。しかし、日本にとっても、古賀さんにとっても大きな、大きな一歩だったと思います。これからも応援していきたいと思います。
そのインドですが、私は今回初めて行きました。行く前から「絶対、お腹壊すよ~」と周りから注意されていたので、非常に気を付けて過ごしました。滞在中、体調はとてもよかったですし、食べものもどれも美味しくて、食べ過ぎに気を付けるほどでした。
インドには、町中に牛がうろうろしているイメージがあったのですが、現在進められている政府方針のもと、そういった光景はほぼ見当たりませんでした。時折を牛や象が歩いているのを見かけはしましたが、いずれも荷物を運んだりして働く動物でした。
私が行ったグジャラートは、来年、半導体の工場を誘致することを発表しましたので、これからどんどん近代化が進んでいくのかもしれません。ただ、道路わきには、そこで暮らしているような人々がいたり、野犬の数がおびただしかったりしていましたので、まだまだ課題があるのでしょう。そんな状況を含めて、出会ったインドの人々の優しさや、インドの持つ歴史的な深み、美味しい食べ物はまた来たいと思わせるものでした。
今日、私はJGの理事長からいただいたジャケットを着ています。この特徴は、縦襟のシングルというデザインです。昔からインドではマハラジャが着ていたそうで、1940年代にマハトマガンディーと共にインド独立運動を率いたネルー首相が愛用していたことから、「ネルージャケット」と言われるものです。現在のモディ首相も必ず着ているので、モディさんの名前にあやかって、「モディベスト」ともいわれているそうです。とても軽くて着心地がいいですね。これもまたインドの文化の一つです。また羽織ってみたい人は校長室まで来てください。
さて、皆さんもこの夏、様々な経験や学びをしたことでしょう。もしかしたら、のんびりしていたら夏は終わってしまった、という人もいるかもしれませんが、それもまた経験の一つです。私が期待するのは、いずれにせよ、そこから何が生まれていくのか、ということです。
もちろん部活で頑張った人も多いでしょう。終業式で詩の朗読をしてくれた放送部は、東京での全国大会に進みましたし、テニス部、ソフトテニス部は夏休みの前半から大きな成果を上げていました。吹奏楽部は甲子園球場で北北海道代表の白樺学園の友情応援を行いましたし、ダンス部は自分たちの大会出場はもちろんのこと、様々なイベントに出場し、啓明の名を広めてくれました。また高校サッカー部は先日の1年生大会で優勝しました。またチアリーディング部は、台風が来る中、東京代々木競技場で行われた大会に出場し、準決勝に相当するところまで進みました。
前島キャンプ場で合宿をした社会部同好会や、来週、東京で行われる国際学会で論文発表をする数理科学研究会のメンバーもこの夏、頑張っていましたね。高校生は現地で、中学生はオンラインでの発表となるそうですが、頼もしいですね。
他にもたくさんの人たちが熱心に取り組む夏だったように思います。成果を発表する文化祭やそれぞれの大会、試合に向けてこれからも頑張ってください。
サマープロジェクトでも先生方の企画してくれた様々なプログラムが行われました。なかなか自分の予定と参加したいサマプロの日程が合わなかったという人もいたとは思いますが、多くの生徒が参加してくれて嬉しいです。これからも啓明の夏のプログラムとして実施していければと願っています。
青島での2つのキャンプ、海洋冒険キャンプと中2の青島キャンプが無事行われたことに感謝しています。ちょうど南海トラフに備える注意喚起がなされることもある中でしたが、何事もなくよかったです。
こうしたキャンプは、多くの人の協力や支えがあってようやく実施できます。そういった方々の協力を含め、先生たちやリーダーを務めてくれた上級生や大学生、社会人の先輩たちの献身的な働きにも感謝したいと思います。
学校主催の海外プログラムも計画通り行うことができました。高校生のイギリス語学・国際交流プログラムには16名の高校生が参加し、イタリア、フランス、ロシア、ウクライナなど、普段ならなかなか出会えない他国の同年代の人たちと一緒に勉強したり、遊んだりしたことは、参加してくれた人たちに大きな影響を残してくれていることでしょう。
中学生の韓国イザベル中学訪問は、久しぶりに実施することができました。日本と韓国の関係が悪化して中断せざるを得なくなった上、コロナ禍があり、ようやく復活させることができました。その間も国と国との関係を超えた両校の深い関係を紡ぎ続けたからこその、今年の再開です。この間の協力をしてくださった方々にも感謝したいと思います。11月には交換訪問を受ける予定なので、その時は中学で盛大にお迎えしましょう。
この夏、自分の取り組みに励んだという人もいるでしょうし、関西学院の企画した学びや交流のプログラムに参加した人もたくさんいますね。参加した人にしか得られない貴重な学びはあるとは思いますが、また機会を見つけて皆でその経験を分かち合えたらと願っています。
もう一つ、これは高校生のみの募集となるものです。今年の正月に起こった能登地震の被災地訪問プログラムをサマプロで計画しましたが、まだ受け入れ態勢が取れないということで断念しました。
ただその後の状況の変化に伴い、連休を使って10月に実施できるように計画を立ててもらっています。
これは昨年の夏にサマプロで能登町、能登高校に訪問した縁があるからこそ、現地の方々が協力してくださるのですが、近日中にこの企画も高校生の皆さんの手元に届きますので、楽しみにしていてください。
被災地では刻々と変化しているところもあれば、手つかずの部分もあるとのことです。現地に立つというだけでもきっと自分自身の人生に大きな意味を残すでしょう。ぜひ積極的な参加を待っています。
さて、いよいよ2学期が始まります。
この夏の経験も皆さんのこれからの歩みの大きな力となることを願っていますし、2学期はその力をいかんなく発揮してほしいと願っています。
私自身もこの夏は大きな経験をしてきました。
冒頭にお話しした7月末のインド訪問だけでなく、中学2年生の青島キャンプの後、1週間、アメリカに渡辺先生と一緒に行ってきました。来夏から隔年で実施しようと計画している、語学・メソジスト研修のための現地訪問です。この企画は、現在行われているイギリス研修に加え、さらに英語上級の生徒に向けたプログラムになります。
ですから対象は高2、高3生にしようと考えています。アメリカ南部のテキサス州ダラスにあるサザンメソジスト大学での学びや、アメリカ文化体験、啓明の創設者ランバス先生の出身教会訪問(ミシシッピ州ジャクソン)などを企画しています。
この企画を実施するため、今回、ダラス市役所や大学スタッフ、教会関係者など多くの方々とお目にかかってきましたが、皆さん、本当に親切に受け止めてくださり、この企画に熱心に協力してくださることになりました。案内ができ次第、皆さんの手元に届くようにしますので、楽しみにしていてください。
こうした海外に行く経験は、自分を見つめなおす機会ともなるものです。
地域、地域での環境や人の気質の違いにはびっくりすることがたくさんありますし、自分の英語スキルの乏しさには、もう少し頑張らねばと思わされました。初めて会った人間にこんなにも親切にしてくれるのかと驚きましたので、自分もまた同じようにしようと考えるようになりました。
世界のあらゆる所を動画で見ることができる時代です。分かったような気分になることも簡単です。でも実際に手を動かし、足を運び、苦労してたどり着いた先で、嗅いだ匂いや太陽の日差し、食べたものの味やちょっと不安に思う気持ち。そういった一つ一つが、経験となって蓄積され、自分の成長となるのでしょう。
青島もそう、海外もそう、部活で勝ち進んで行く会場もそうですし、新たな出会いもそうです。
2学期も様々なチャレンジの機会が皆さんを待っています。臆することなく、前向きなチャレンジャーでいてください。
今の時代、啓明生である皆さんはテクノロジーに使われるのではなく、使いこなすリテラシーと精神をしっかり養ってほしいと願っています。
SNSでの配慮や想像力に欠けた投稿や配信は、この時代の闇の部分でもあります。他者への思いやりと賢明な態度を持った啓明生として、流されることなく、強くあってほしいと願います。
たとえ誘惑があったとしても、神様の視線が自分には注がれているという自覚を持ってほしいのです。なんでもしようと思えばできる環境、そして能力を与えられているというのは、神様からの信頼です。その信頼に対する謙虚な姿勢も携えて、信頼に応えようとすることこそ、私たちに期待されているのではないでしょうか。
この2学期も、私たちの歩みをつぶさに覚え、いつも見守ってくださる神様の信頼に応えようとする我々啓明学院でありたいと願っています。皆さん一人一人とその願いを一つのものとして、共に歩んでいきましょう。
指宿 力