KEIMEI GAKUIN TOPICS BLOG

校長コラム

入学式 式辞 (高校)

2023年4月7日

高校入学式のメッセージ

 

新入生の皆さん、啓明学院高等学校へのご入学本当におめでとうございます。

ここには新しくその制服に身を包んだ人もいれば、中学を啓明で過ごし、高校生になった人もいます。そんな違いはありますが、いずれにしても新しく啓明学院高校に入学した皆さんです。手を携え、歩みを共にし、真の友情を育んでいきましょう。今日から皆さんが、どんな高校生活を始めてくれるのか、私も本当に楽しみにしています。自由に溌剌と、何より啓明学院の生徒として、臆することなく自分自身の啓明ライフをつくり上げてください。

 

保護者の皆さま、お子様のご入学おめでとうございます。

数ある選択肢の中から、啓明学院高校を大切なお子様の学びの場として選んでいただいた期待を、教職員一同、襟を正して受け止め、その成長の日々を共に歩んで参りたいと思います。思いも掛けないことが起こりえるこの世界で、一人一人の生徒が、神様と人に愛される人間となれるよう、そして自立した人間として与えられた多くの才能と力を活かして歩めるよう、ご家庭と連帯しながら、私たちも心尽くし、思いを尽くして参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、新入生の皆さん、皆さんは高校のカリキュラムが新しくなって2年目を迎える世代になります。そこでは学びに向けた学力の3要素というものが示されたので、これまでも何度か耳にしてきたのではないかと思います。「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」というものがそれに当たります。この数年で学習環境も大きく変化しましたが、求められる力の変化に伴った、文科省の提案がこの三つです。啓明学院ではこういったことにも対応しながら、これまで本校が行ってきた学びを基に、先生たちとも学びを深め、新しいカリキュラムを作りました。

 

啓明学院の学びとはリベラルアーツ、これは本当の意味で、人を自由にするための学びと言いますが、リベラルアーツ型の学びを基にしています。それは、こうあるべき、という思い込みから自分を解き放つ、幅広く、深い学びともいえますし、これがもともとはギリシア時代からの自由七科から生まれていることは、学校案内に書いたとおりです。それをさらに21世紀に生きる皆さんに相応しいものとしていくために、新しいカリキュラムを整えたのものが、皆さんの受ける授業の基になっています。

 

啓明では、高校生になると一人一人が所有するディバイスのメインプラットフォームは、オフィス365となります。これはMicrosoft社の製品になります。コミュニケーションツールとしてはTeamsを利用して、日々の学びでのやり取りなどを行います。

このMicrosoft社では、これからの未来に生きていくのに必要な力を Future ready skills という言葉で表現していて、そこでは六つのポイントで必要な力を示しています。

Communication(議論しあう力)、Collaboration(協働しあう力)、Critical Thinking(疑問を逃さない思考性)、Creativity(創造性)、Curiosity(好奇心)、Computational Thinking(計算論的思考)の六つのCからなるものです。

それは、私たちにとっても共感する部分であります。製品の良さを活かして、啓明に学ぶ生徒たちに、高校生の間に経験し、学び、スキルを身につけてもらいたいと願い導入しています。機能を使いこなす技術的なスキルだけでなく、コミュニケーション力やプレゼンテーション力を高めることも期待しています。

 

また一人一人のディバイスには、Microsoftのものだけでなく、動画編集や絵を書くためのアプリケーションであるPhotoshopやRUSHなどのAdobeの製品が入っています。そのようなクリエイティブな感性を刺激するものは、使ってみたいと思っている人にはとても嬉しいものでしょう。またアダプティブラーニング、個々に取り組む学習支援のためのスタディサプリ、通称スタサプや、英語学習に特化したmikanなどのアプリケーションも入っています。もちろん、それ以外にもいろいろなアプリが入っているので、楽しみにしてほしいと思いますが、そういったものも活用しながら、是非、皆さん自身のFuture-ready skillsを高めていってほしいと願います。

 

しかし、自由にそのようなアプリケーションを使える反面、皆さん自身がそういったものをどう使うかという個々の問題が生まれてくるのも事実です。面白がって他の人をいやな思いにさせたり、授業中ですら遊びに使ってしまう人がいるかもしれません。もちろん、ある部分、それを規制するのはできなくはないのですが、そんな世界は、四六時中監視カメラに観られている中で生活するようなものです。皆さんは、そんな世界に生きたいと思いますか。

コロナ禍の2020年に出版された『スマホ脳』という新書があります。ベストセラーになったので、読んでいなくてもタイトルくらいは聞いたことがあるかもしれません。著者はスウェーデン人のアンデシュ・ハンセンという方です。ハンセンさんは、もともと人間はスマホに対応するようにできていないと述べています。スマホの様々なアプリには麻薬のような効果があり、人間はその誘惑をコントロールすることができないというのです。特にSNS関係ですね。

 

また、この本の中に出てくる言葉の一つに「グーグル脳」という言葉があります。Googleの検索機能は本当に便利なものですが、どうやら情報が別の場所に保管されていると分かっている場合には、脳は自分では覚えようとしないのだ、ということを実験結果とともに紹介しています。これについて、思い当たることがある人もいるでしょう。

 

私たちには、知って、自分自身に定着させるべき知識があるはずです。その知識は、私たち自身が社会と繋がったり、批判的な問いかけをしたりするために不可欠です。それはグーグルなどの検索では代用できない、大切な生きる力です。

 

こういったことを考えていると、「テクノロジーの急激な進化の中にいる私たちにとって、本当に必要なことは」と尋ねられれば、私は、「自律」、「自分自身を律する心を養うことだ」と答えるでしょう。自律、それは自分で自分の行動をコントロールして、自分の立てたルールを自分で守ることです。これこそ、これからの未来を生きる人が、これまでの人より一層身につけなければならないスキルではないかと思うのです。

 

また、簡単に手に入る情報は定着しにくい、ということについては、早稲田大学の教授であるドミニク・チェンさんという方のインタビューで答えられていた言葉が印象に残っています。チェンさんは、「簡単に頭から情報がこぼれ、身につく知識にもならないのは自腹を切らないからだ」と言います。ここでチェンさんの言う「自腹を切る」とは、単にお金を掛けることだけでなく、意識を集中させて向き合うということも含んだ意味です。意識を集中させ、時間をかけて向き合ったことのみが自分の中に残ってくのだ、ということです。たとえば、本を読むことは時間も費やします。しかし、本を読むということは著者と対話することでもあります。

 

それを繰り返す行程でつくられるのは、様々な著者から吸収した知識と対話によって生まれた、他の誰でもない自分自身です。それを時間がかかるから、とか、面倒だから、と理由づけて避けていれば、他の誰でもない自分自身になることは難しいことでしょう。授業もしかり、行事もしかり、クラブ活動だってそうでしょう。

何事も自腹を切る、つまり意識や思いを集中させ、時間を掛けて取り組むことが、唯一無二の自分づくりの機会になるはずです。その過程で、自分とは違う異質な意見や人に出会い、刺激を受け、自分自身の考え方やものの見方が変化していく。それこそが学びであり、他のだれでもないあなたをあなたにしていくことでしょう。

 

いよいよ皆さん自身の高校生活が始まります。今や数多くのテクノロジーが身近にある時代です。昨年11月に誰もが無料で使えるようになったChat GPTは簡単に質問に答え、大学生程度までの論文なら十分書ける力を持っています。その便利な点の一つは、自分でいくつもの資料に当たらなくても、Chat GPTが様々なデータをまとめたものを文章化して答えてくれるというところにあります。数週間前にはさらにアップグレードしたGPT-4が出ましたが、進化しすぎで人間がついていけないと、話題になっていますね。

 

これらは使い方によっては便利なものですが、易きに流れ、本来自分がやるべき課題をAIに委ねてしまうと、まさに自腹を切らない自分、つまり唯一無二の自分づくりの機会を失った存在になってしまうのは目に見えています。だからこそ皆さん、高校時代、是非、自分は何を求めている人間なのかを自分自身に問いかけてみてください。何度も何度も、浅いところにいる自分ではなく、心の奥の最も深いところにいる自分自身に、です。そこにきっと本当の自分の願いがあるはずだからです。本当の自分とは、たとえば命を与えてくださった方々の温かい思いに包まれた、本来そうありたい自分自身のことです。そんな自分自身と出会うとき、私たちはきっとそこに本当の自分の願いや思いと出会うことができるのではないでしょうか。

 

聖書は私たちに語ります。求め続けよ、探し続けよ、門を叩き続けよ。

 

何度でも、その自分と対話し、本当の自分は何を求めているのか、いったい何を探しているのか、なぜその門を叩くのか、考えてみてほしいのです。そこにきっと本当の自分が何を望んでいるのか、ということの答えがあることでしょう。是非、この啓明学院で本当の自分と出会い、本当の自分が何を願っている人間なのかを知ってほしい。

その歩みは一筋縄ではいかないことばかりかもしれませんが、それでも粘り強く取り組んでください。上手くいかないことがあっても、へこたれずに何度でも挑戦してください。そうやって誰にも代わることのできない皆さん自身をつくるものです。皆さん自身のFuture ready skillが身につくことでしょう。

 

きっとその歩みの中に、皆さん自身が隣にいる人や家族や社会を温かい心で包む、そしてこの世に必要とされ、神様に愛される、あるべき啓明生の姿が見えてくることでしょう。そして、その学びの先にこそ、啓明でよかった、啓明でなければならなかった、と心からそう思える日が来るはずです。

その日を楽しみにし、いよいよ始まる高校生活を充実したものとしていきましょう!皆さんのこれからを心より楽しみにしています。

 

以上をもって式辞といたします。

 

 

 

指宿 力